スーパーの競合分析では、同じ買い物目的で選ばれる店を調べ、価格・品ぞろえ・利用しやすさ・販促の差を、自店の売場や集客へ反映します。近所のスーパーだけでなく、食品を買えるドラッグストアやコンビニ、ネットスーパーも、利用場面に応じて比較対象になります。
ただ安い店を探して、全商品を値下げする必要はありません。自店の客数や販売データから課題を絞り、どの商品を、どの条件で比べ、何を変えるかを決めます。調査した情報を施策に移し、粗利や廃棄も含めて見直す手順を紹介します。
この記事でわかること
- スーパーが比較する競合店と、商圏の考え方
- 価格・生鮮・惣菜・売場・販促を調べるポイント
- 比較結果から差別化を選び、施策を検証する方法
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競合の範囲と、今回の調査目的を決める
まず「誰の、どの買い物で選ばれたいか」を考えます。平日の夕食を少量ずつ買う人と、週末に車でまとめ買いする人では、比較する店も条件も変わります。

自店の販売データから、改善したい場面を絞る
客数が減っているのか、来店しても買上点数が少ないのか、特定部門の売れ残りが多いのかを確認します。全体の売上だけでなく、曜日・時間帯・部門ごとに見ると、調査の問いを作りやすくなります。
例えば「平日夕方の惣菜を買う人を増やす」なら、その時間の品ぞろえ、容量、価格、欠品、買いやすさを中心に調べます。調査表を埋めることより、今回決めたいことを先に置きましょう。
同じ買い物目的で選ばれる店を候補にする
近隣の食品スーパーは基本の比較先です。そのうえで、飲料や日用品を一緒に買うならドラッグストア、短時間で夕食を買うならコンビニや惣菜店、重い品を自宅で受け取りたいならネットスーパーなども候補にします。
店舗数を増やしすぎず、今回の課題に関係する店から始めます。チェーン全体のイメージと、実際に比較する一店舗の品ぞろえ・営業時間・サービスは分けて記録します。
商圏は距離だけでなく、移動経路と地域の世帯を見る
商圏は、来店客が暮らす場所や利用する範囲を考えるためのものです。駅、住宅地、幹線道路、川、駐車場への入りやすさなどを地図へ置き、徒歩・自転車・車での来店を分けて考えます。
地域の人口や世帯は、公的統計でも確認できます。ただし、統計の調査年と集計単位を確かめ、地域の住民全員が自店の顧客になるとは考えないようにします。自店の購買データや、任意で聞けた来店理由も合わせて判断します。
jSTAT MAPでは、小地域やメッシュなどの統計を地図へ表示し、店舗周辺の地域分析に使える機能が提供されています。
出典元:政府統計の総合窓口|jSTAT MAP(要約)
競合の商圏分析|範囲・店舗分布・人口の調べ方店舗の分布と地域データから、比較する商圏を考える手順を紹介します。関連記事|マーケティングノート
価格・品ぞろえ・売場・販促を同じ条件で比べる
調査の条件が違うと、価格や売場の印象も変わります。同じ曜日や時間帯、商品の規格を基準にし、そのとき確認できた事実を残します。

価格は同じ商品・内容量・購入条件で比較する
同じ商品なら、メーカー、商品名、容量、通常価格か特売か、会員限定かを記録します。内容量が違う場合は、100g当たりなどの単価も計算します。
次は、同じ銘柄の冷凍野菜を容量違いで比較する架空の例です。価格は説明用の税込金額で、実際の店舗の販売価格ではありません。
| 比較する店 | 価格・内容量 | 100g当たり | 確認した条件 |
|---|---|---|---|
| 自店 | 198円・500g | 39.6円 | 通常価格・会員条件なし |
| 競合店 | 298円・800g | 約37.3円 | 特売期間・会員条件なし |
一袋の価格では自店が安く、容量当たりでは競合店が安い例です。必要な量や持ち帰りやすさも選ぶ理由になります。価格差は、容量と購入条件をそろえてから判断します。
PB商品や生鮮品のように、同じ規格でそろわないものは別に扱います。産地、等級、加工状態、容量などを残し、価格だけで品質の優劣まで決めないことが大切です。
生鮮と惣菜は、種類だけでなく量・時間帯・欠品を見る
生鮮では、同じ食材の容量違い、下処理済み商品、少量パックなどを確認します。惣菜では、夕食の主菜や副菜を組み合わせられるか、一人分から買えるか、調査した時間に何が並んでいるかを見ます。
一度の欠品を、その店がいつも品不足だという評価にしないようにします。曜日や時間を変えて確かめ、表示で確認できる情報と、調査者の印象を分けて残します。
売場とサービスは、買い物を終えるまでの流れで見る
入店してから、商品を探し、会計して持ち帰るまでを確認します。入口から目的の売場を見つけやすいか、必要な品を一緒に選べるか、レジ待ちや袋詰めで困らないかなど、買い物の流れに沿って記録します。
駐車場、営業時間、決済、配送などの条件は公式の店舗案内でも調べます。来店客の見た目だけで年齢や生活状況を決めつけず、提供されているサービスと自店の顧客の要望を照合します。
チラシ・アプリ・SNSは、訴求と利用条件を記録する
何を目玉として伝え、いつ来店してもらおうとしているかを見ます。商品、特売期間、ポイント、クーポンの対象、店頭での案内との一致を確認します。投稿数や配信回数が多いだけで、集客に成功しているとは判断できません。
2026年のスーパーマーケット年次統計調査でも、ホームページ、SNS、電子チラシなど、複数の販促媒体が調査されています。自店では、顧客が利用する接点と、更新・運用できる体制から選びます。
2026年調査は、新聞折り込み以外の販促媒体として、自社ホームページ、SNS、電子チラシなどの利用状況を掲載しています。
出典元:スーパーマーケット3団体|2026年年次統計調査・69頁(要約)
比較結果から、スーパーの差別化を考える
調査した差をすべて埋める必要はありません。自店の顧客が必要としていて、店舗の人員・仕入れ・設備で提供できるものから選びます。

店ごとの記録を、同じ項目で並べる
調査日、曜日、時間、店舗、商品・サービスの条件、確認した事実を残します。「惣菜が充実」だけでなく、「17時30分に確認した一人分の主菜の種類」など、後で比べ直せる形にします。
店内での撮影や記録は店舗のルールに従い、写真が必要な場合は確認を取ります。公開のチラシや店舗案内、購入した商品の表示・レシートも、比較条件を残すために使えます。
J-Net21は、競合店の基本情報や商品・価格・販促などをカード化し、商圏内の地図と合わせて整理する方法を紹介しています。訪問条件や観察結果を蓄積して比較します。
出典元:中小機構 J-Net21|競合店調査の具体的な方法(要約)
競合店調査のやり方|8項目・無料Excelシート店舗調査の基本項目と、無料Excelシートを使った記録方法を紹介します。関連記事|マーケティングノート
安さ以外に、自店を選ぶ理由を探す
品質、品ぞろえ、調理の手間を減らす商品、必要な量で買えること、利用しやすい時間なども比較します。競合より何でも多くそろえるのではなく、自店の顧客が困っている場面を一つ選びます。
2026年の年次統計調査では、企業の今後の差別化戦略の業界推計値は「品質」51.2%、「品揃え」22.4%でした。これは企業の方針を示す調査で、来店客が店を選んだ理由の調査ではありません。自店の顧客に合うかは、別に確かめます。
同調査の「今後の差別化戦略」では、業界推計値で品質、品ぞろえ、サービス向上、価格の順に挙げられています。回答企業の単純集計と業界推計は区別されています。
出典元:スーパーマーケット3団体|2026年年次統計調査・7頁(要約)
差を、売場や販促で試す内容へ変える
次は、自店の課題と競合調査を組み合わせた架空の例です。観察された差が、そのまま売上の原因だと証明されたものではありません。
| 課題 | 調査で見る差 | 自店で試す内容 | 確認する結果 |
|---|---|---|---|
| 夕方の惣菜が売れない | 主菜・副菜の組み合わせと補充 | 対象商品の構成と補充時間を調整 | 時間帯売上・粗利・廃棄 |
| 少量の買い物が不便 | 小容量と使い切り商品の有無 | 対象品を絞り容量違いを試す | 販売数・買上点数・作業負担 |
| 特売の認知が弱い | 告知の時期と店頭案内の一致 | 告知と売場表示をそろえる | 対象品の販売・反応・販促費 |
誰のどんな不便を減らすかと、試した後に見る数値を一緒に決めます。売場で提供できる内容を整えてから、チラシやWeb広告などで伝えます。
施策を試し、客数と利益で確かめる
新しい施策は対象商品や時間帯を絞り、実施前の状態を残してから始めます。売上が増えた場合も、値引きや廃棄、販促費を含めて判断します。

曜日・時間帯・天候・特売条件を残す
比較する期間の長さをそろえ、平日と休日、天候、祝日、他の特売などの違いを記録します。競合の新規出店直後も、一日の様子だけで判断せず、開店時の販促と継続的な変化を分けて見ます。
複数の売場や施策を一斉に変えると、何が影響したのか分かりにくくなります。店舗運営に支障のない範囲で変更点を絞り、確認する日と担当者を決めます。
売上を客数と客単価に分け、粗利とロスも見る
売上は、客数と客単価に分けて見ます。値上げや大容量商品の購入で客単価が増えた場合と、来店する人が増えた場合では、次に行うことが違うためです。
| 見る指標 | 対象や集計条件 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 客数 | 同じ曜日・時間帯の会計件数など | 来店や購入機会の変化 |
| 客単価・買上点数 | 会計1件当たりの金額・点数 | 量や組み合わせの変化 |
| 粗利益 | 同じ部門・商品と会計基準 | 売上だけでなく利益が残るか |
| 値引き・廃棄 | 対象商品と同じ集計方法 | 売れ残りや値引きへの影響 |
| 販促費・作業負担 | 媒体費・制作・店舗作業 | 続けられる費用と体制か |
POSの客数が会計件数であれば、同じ人の再来店も含みます。人数としての来店者数と、会計件数を混ぜないようにします。粗利やロスも自店で使う定義をそろえ、同じ費用を重ねて差し引かないよう経理・店舗で確認します。
業界統計は背景に使い、競合一店舗の実績とは分ける
業界全体の販売動向は、季節や市況を考える材料になります。ただし、業界が伸びていることだけでは、近隣の競合店や自店が同じように伸びているとは判断できません。
月次の公表値は対象月、速報・確報、集計範囲を確かめます。自店の変化と、地域・業界の変化を分けて確認し、継続・修正・終了を決めます。
協会の月次調査は、販売統計と景気動向調査で構成され、速報と翌月の確報を公表しています。部門のさらに細かな分類や、日次・週次の統計は提供していないと案内されています。
出典元:全国スーパーマーケット協会|月次統計調査(要約)
スーパーの競合分析でよくある質問
比較先や調査結果の使い方で迷いやすい点を整理します。

ドラッグストアやコンビニも競合に含めますか?
同じ買い物目的で選ばれる場合は含めます。飲料や日用品のまとめ買い、短時間での夕食購入など、比較する場面を決めてから、その目的を満たす店を選びます。
競合より高い商品は、すべて値下げすべきですか?
すべてを値下げするとは限りません。同じ商品・容量・特売や会員の条件かを確かめ、顧客が必要な量や品質、購入のしやすさも比べます。値下げを試す場合は、粗利や販売数への影響を確認します。
無料で競合調査を始めるには何を使えばよいですか?
公開チラシ、公式店舗案内、地図や公的統計、共通の調査シートから始められます。調査日・時間帯・商品条件・確認した事実をそろえて残し、購入した商品やレシートも比較に使います。
売上が大きいチェーンの施策をまねればよいですか?
そのまま取り入れるとは限りません。チェーン全体の売上と一店舗の成果、売上と利益は別です。商圏、仕入れ、人員、設備の違いを確かめ、自店で提供できる価値と採算から判断します。











