不動産仲介や賃貸管理の競合分析では、同じ地域・顧客・業務で比較される会社を選び、物件の条件と会社のサービスを分けて調べます。掲載件数や家賃だけで優劣を決めず、自社の反響・内見・成約の記録と照らすと、改善する箇所を絞れます。
ただし、賃貸仲介の来店を増やしたい場合と、管理を任せるオーナーを増やしたい場合では、比較する相手も項目も変わります。まず調査の目的を決め、公開情報で分かる範囲を押さえましょう。この記事では、不動産会社の競合調査の進め方を、比較項目・無料の情報源・架空の記入例から解説します。
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比較相手を業務と商圏から絞る
競合を広く集めすぎると、自社と条件の違う大手の施策まで追うことになります。今回増やしたい相談や契約を一つ決め、その顧客が比較する会社を選びます。

賃貸仲介・売買仲介・管理を分ける
賃貸仲介なら、同じ駅や沿線で、似た賃料帯の住まいを探す人が利用する会社が候補です。売買仲介なら、購入者への物件紹介と、売主からの売却相談を分けて考えます。どちらの相談を増やすかで、見るページやサービスが異なるからです。
管理会社の場合は、入居希望者だけでなく、管理を委託するオーナーが比較する相手を調べます。管理の料金、募集への対応、修繕の受付、報告内容などが対象です。仲介店舗の多さだけでは、管理サービスの違いを説明できません。
| 調査の目的 | 比較する相手 | 主に確かめる点 |
|---|---|---|
| 賃貸の来店・内見を増やす | 同じ駅・賃料帯を扱う仲介会社 | 物件情報、費用の説明、内見までの案内 |
| 売却相談・購入相談を増やす | 同じ地域・物件種別を扱う売買仲介会社 | 査定や販売の説明、地域情報、相談の導線 |
| 管理の受託を増やす | 同じ地域・建物種別の管理会社 | 委託範囲、料金条件、募集・修繕・報告の内容 |
顧客と物件種別が重なる会社を選ぶ
同じ市内でも、単身者向け賃貸を中心に扱う会社と、郊外の戸建て売買が中心の会社では、直接競う場面が少ないことがあります。顧客の目的、予算、対象の駅や地域、物件種別をそろえて候補を選びます。
最初は少数の会社を継続して調べる方が、違いを追いやすくなります。たとえば自社と直接比較される3社を決め、別枠で参考にしたい会社を1社置く方法です。社数は目安で、地域に候補が少なければ無理に増やす必要はありません。
商圏は店舗の半径だけで決めない
不動産では、会社の店舗所在地と、顧客が物件を探す範囲が一致するとは限りません。同じ沿線の複数駅で探す人もいれば、遠方からオンラインで相談する人もいます。自社の問い合わせ記録から、希望駅・地域と対象の物件を確認します。
地域の背景を調べるときは、jSTAT MAPの小地域やメッシュ単位の統計が役立ちます。世帯や人口の分布を見ながら、調査する地域を考えられます。ただし、そこに住む人口を、そのまま引っ越し希望者や自社への問い合わせ見込み人数とはみなしません。
「小地域(町丁・字)、メッシュ毎の統計の結果を地図上に表示」
競合の商圏分析|範囲・店舗分布・人口の調べ方店舗の分布と地域データから、比較する商圏を考える手順を紹介します。関連記事|マーケティングノート
物件の条件と会社のサービスを分けて調べる
競合が良く見える理由は、物件自体の魅力かもしれませんし、説明や案内の分かりやすさかもしれません。自社で変えられる点を探すために、この二つを分けて記録します。

物件は価格・立地・広さ・状態をそろえる
賃貸物件なら、駅からの距離、間取り、専有面積、築年数、階数、設備、入居可能日を見ます。家賃だけでなく、管理費・共益費や契約時の費用も記録しましょう。毎月の負担と初期費用を分けると、条件の差を説明しやすくなります。
売買物件では、販売価格に加え、土地・建物の面積、築年、接道、権利、修繕やリフォームの状況などを確認します。条件が近い事例でも、価格差を一つの設備だけの効果と決めつけません。管理の比較では、対象建物と委託する業務範囲が近いかを確かめます。
不動産投資の競合分析|賃料・設備・募集条件の比べ方賃貸経営で使う競合物件の選び方と、賃料・設備・募集条件の比較を詳しく解説します。関連記事|マーケティングノート
掲載件数は物件の重複と確認日を残す
ポータルサイトの掲載件数は、調べた条件に合う広告がどれだけ表示されたかを示す数字です。同じ部屋が複数の会社や媒体から掲載されている場合があるため、足し合わせても地域の部屋数にはなりません。競合の成約件数やシェアとも別です。
比較表には、媒体名、検索条件、確認日、掲載件数を残します。個別物件を比べるときは、確認できる住所・建物名・階・間取り・面積などから同じ物件の重複を整理します。部屋番号などが分からなければ、同一かどうかを推測で確定しないようにします。
また、掲載が消えた理由は成約だけとは限りません。募集の中断、媒体の変更、掲載期間の終了なども考えられます。公開ページの消失を、競合の成約実績として数えないことが大切です。
情報の詳しさと相談までの流れを比べる
同じ物件を扱っていても、写真の分かりやすさ、間取り図、周辺情報、費用の説明には違いがあります。スマホで物件を見て、希望条件を伝え、内見や相談を申し込むまでの流れを確認します。フォームの項目、連絡方法、営業時間の案内も比較対象です。
対応の早さは、競合サイトの「即日対応」といった表示だけで実測したことにはなりません。「サイトに記載された方針」と「自社で記録した対応時間」を分けて残します。調査のために架空の内見予約や問い合わせを送らず、公開情報と自社が適切に取得した顧客の声から改善を考えましょう。
賃貸管理は業務範囲・報告・対応体制を比べる
賃貸管理の競合分析では、同じ地域・建物種別のオーナーが比較する会社を選びます。管理料率だけでなく、含まれる業務、追加費用、報告、入居者対応の体制を同じ項目で調べます。
国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルは、管理受託契約前の説明事項として、報酬・具体的な管理業務の内容・実施方法を示しています。料金を比べる際も、受託する仕事と実施方法を合わせて確認しましょう。
「報酬及び具体的な管理業務の内容・実施方法等」
| 比較項目 | 公開情報で確かめる点 | 自社で照らす材料 |
|---|---|---|
| 募集の支援 | 募集情報の作成・更新、仲介会社との連携 | 掲載更新の記録、反響・内見の報告例 |
| 料金と範囲 | 管理料に含む仕事、別途費用になる仕事 | 同じ建物・委託範囲の提案内容 |
| 修繕・入居者対応 | 受付時間、手配の範囲、費用承認の流れ | 受付から回答・完了までの実記録 |
| オーナーへの報告 | 頻度、収支・維持保全・対応状況の説明 | 報告書の内容、未解決事項の追い方 |
| 担当と引き継ぎ | 窓口、担当不在時の対応、情報共有の案内 | 対応履歴の共有、担当変更時の引き継ぎ |
たとえば「24時間対応」という表示でも、受付だけなのか現地対応まで含むのかで意味が変わります。公開されていない条件は「要確認」と残し、表示上の方針と実際の対応時間を混ぜないようにします。
管理戸数や入居率を比較する場合も、集計時点、対象物件、累計か現在の数字かを確かめます。定義がそろわない数値だけで管理品質の優劣は決められません。自社の受託を増やすなら、オーナー相談から提案・管理契約へ進む状況と、契約終了の理由も合わせて見ます。
口コミは、相談時にどこで困りやすいかを考える材料になります。ただし投稿数・時期・内容が偏ることもあるため、星の平均だけで会社全体の品質を断定しません。自社の相談記録に同じ疑問があるかを確かめ、説明や報告の改善へつなげます。
無料の情報と比較表で差を確かめる
公開情報を集めたら、どの数字を比べているのかをそろえます。特に、募集価格と実際の取引価格を同じものとして扱わないようにします。

募集条件・公的価格・地域統計を使い分ける
ポータルサイトや会社の公式サイトでは、現在表示されている募集条件やサービスを調べます。一方、国土交通省の不動産情報ライブラリには、不動産取引価格情報と成約価格情報があります。売買の背景を確かめる資料として、対象地域・物件種別・取引時期を合わせて参照します。
取引価格情報は、取引当事者へのアンケート回答などを基にした情報です。成約価格情報は、指定流通機構(レインズ)の保有情報を基にしており、公開される物件種別は戸建住宅とマンションです。いずれも個別の取引が特定されないよう加工されているため、目の前の募集物件の成約価格を確認できるとは限りません。
「物件が容易に特定できないよう加工した上で公表」
公表は四半期単位で、直近の募集広告とは時点も異なります。個別事情によって価格が変わり、価格は数値の丸め以外に補正されていないという留意点もあります。地域の価格を一つ平均して、自社物件の適正価格と断定する使い方は避けましょう。これらの売買価格情報を賃貸物件の成約賃料として読むこともできません。
「価格については数値の丸め以外は一切補正を行っておりません」
| 情報源 | 分かること | 比べるときの条件 | 分からないこと・注意点 |
|---|---|---|---|
| 会社の公式サイト・ポータル | 表示中の募集条件、サービス、相談の導線 | 地域・物件種別・検索条件・確認日 | 広告の件数から成約数は分からない |
| 不動産情報ライブラリ | 公開された売買の取引価格・成約価格情報 | 情報区分・取引時期・面積・築年など | 匿名化や集計時点に注意。競合会社別の成約実績ではない |
| jSTAT MAP | 小地域・メッシュ等の統計分布 | 調査年・地域範囲・指標の定義 | 人口から現在の物件探索者数は分からない |
| 自社の問い合わせ・営業記録 | 希望条件、対応時間、内見・申込・成約の状況 | 集計期間・重複・対象顧客・段階の定義 | 競合全体の顧客動向を示すものではない |
比較表には事実と仮説を別に書く
以下は、賃貸仲介会社が同じ駅周辺の1Kを比較する架空の例です。実在する会社・物件の調査結果ではありません。月額費用は家賃と管理費・共益費の合計とし、初期費用や設備の条件も別に確かめる前提です。
| 比較項目 | 自社で扱う物件A | 競合が扱う物件B | 次に確かめること |
|---|---|---|---|
| 立地・面積・築年 | 徒歩8分・25㎡・築12年 | 徒歩6分・23㎡・築10年 | 同条件ではないため価格差の理由を決めつけない |
| 月額費用 | 家賃7.0万円+共益費0.5万円=7.5万円 | 家賃7.2万円+共益費0.3万円=7.5万円 | 家賃だけの比較ではBが高く見える。初期費用も確認 |
| 公開ページの情報 | 室内写真が少なく収納が不明 | 収納内部の写真と寸法説明がある | 自社の問い合わせに収納の質問が多いかを確認 |
| 改善の仮説 | 収納内部の写真と寸法を追加する | 参考にした説明を記録する | 自社で撮影・作成し、追加後の内見予約を追う |
表の数値は観察した事実、最後の行は試す仮説です。「競合は収納写真があるから成約が多い」とは、この情報だけでは言えません。見つけた違いを原因と決めず、自社で確かめる改善案に変えると、調査結果を使いやすくなります。
3CとSWOTは、集めた事実を整理するときに使う
3Cは、顧客・競合・自社の三つから状況を整理する考え方です。たとえば「単身の相談者から収納の質問が多い」「競合は寸法まで説明している」「自社は写真を追加できる」と並べると、改善案が具体的になります。
SWOTは、自社の強み・弱みと、外部の機会・脅威を分ける整理法です。地域での相談経験を強み、新たな住宅需要を機会として考える場合も、その根拠を添えます。表の空欄を埋めるために「地域密着」「接客力」と書くのではなく、確認できた事実から判断しましょう。
改善策を試し、反響・内見・成約で追う
調査を終えたら、自社で変えられることを一つ選びます。予算や担当者を決め、何を改善したら成功とするかを先に置くと、次の判断につながります。

顧客が迷う箇所から一つ直す
物件の閲覧はあるのに問い合わせが少ないなら、写真、費用、入居条件など、判断に必要な情報が足りているかを確認します。問い合わせ後に内見へ進まないなら、自社の連絡時間、候補日の出し方、案内内容を調べます。競合サイトの見た目をまねるだけでは、こうした課題は解けません。
管理の受託を増やす場合は、オーナー向けに料金に含まれる業務や報告の例を示すなど、説明を改善します。売却相談なら、査定から販売までの流れや、地域の販売事例の説明を見直します。会社全体を一度に変えるより、相談の目的に合う一箇所から試しましょう。
空室対策の完全ガイド|原因診断から募集・内見・退去予防まで実務解説空室の原因を切り分け、募集・内見・退去予防を改善する手順を紹介します。関連記事|マーケティングノート
同じ期間・定義で、次の段階へ進んだ割合を見る
賃貸仲介なら、反響数、内見予約数、実際の内見数、申込数、成約数を分けて記録します。同じ人が複数物件に問い合わせた場合をどう数えるかも決めます。問い合わせ件数と相談者数を混ぜると、改善前後の比較が崩れてしまいます。
たとえば、ある期間に獲得した重複のない相談者40人のうち、後から内見に進んだ人が12人なら、内見に進んだ割合は30%です。この数字は架空の計算例で、業界の基準ではありません。同じ人たちの経過を追い、まだ検討中の人がいるかも残します。
繁忙期と閑散期、物件の入れ替わり、広告費の変更でも反響は動きます。期間や条件をそろえて比べ、担当者の工数、広告費、得られた収入も合わせて判断します。管理受託なら相談から提案・契約へ、売買なら購入相談と売却相談を分け、自社の流れに合う指標を置きます。
調査日と更新担当を決めて続ける
比較表には、URL、確認日、担当者を残します。募集内容や料金が変わったら更新し、分からない情報は空欄や「未確認」のままにします。自社の広告も、取引状況を確かめて、成約済みの物件を掲載し続けない運用が必要です。
不動産公正取引協議会連合会のガイドラインは、契約済み物件を削除せず更新を繰り返すなどの例を、おとり広告の態様として示しています。競合の掲載量を追うために広告件数だけを増やさず、管理できる情報量と正確さを優先しましょう。
「契約済みとなった物件を削除することなく更新を繰り返す等」
不動産の競合分析でよくある質問
公開情報には分かる範囲があります。自社の記録と区別しながら、調査の目的に必要な情報を選びましょう。

無料の情報だけでも競合調査できますか?
公式サイト、ポータルサイト、不動産情報ライブラリ、jSTAT MAPと自社の営業記録から始められます。ただし、無料でも情報収集や整理の工数はかかります。競合の非公開の成約数や顧客名まで分かるものではありません。
競合の掲載件数から売上や成約率は分かりますか?
掲載件数だけでは分かりません。同じ物件の重複や掲載範囲の違いがあり、広告が消えた理由も成約とは限らないためです。上場会社などが公表する業績を参照する場合も、会社全体の数字と個別店舗・商圏の実績を分けます。
競合より家賃や価格を下げれば差別化できますか?
価格差は比較材料ですが、それだけで選ばれるとは限りません。立地・広さ・状態・初期費用などの条件をそろえ、写真や説明、相談のしやすさも確認します。仲介会社だけで変更できない条件もあるため、所有者等との合意が必要な事項と自社で直せる事項を分けます。
AIに競合分析を任せても大丈夫ですか?
公開情報の項目整理や比較表の下書きに使えますが、元のURL・確認日・物件条件を人が確かめます。古い募集条件や別の物件を混ぜた回答を、そのまま判断に使わないようにします。顧客の個人情報や非公開の契約情報を、利用条件や社内ルールを確認せず入力しないことも大切です。
物件を比較している人との接点を増やしたい方へ
ライバルマーケティング広告は、競合の不動産サイトなどを閲覧する比較検討層への広告を相談できるサービスです。競合調査で整理した地域・物件種別・相談の目的を、配信対象や案内ページの検討にも使えます。
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