建設業の競合分析は、同じ地域・工種・請負形態で比較される会社を選ぶところから始めます。許可や施工実績、公開された経営情報を調べ、自社の見積もり・受注の記録と照らすと、増やしたい工事と改善する説明を絞れます。
ただし、民間の施主から直接受ける工事と、元請会社から受ける専門工事、公共工事の入札では、選ばれ方が異なります。この記事では、建設会社・専門工事会社が競合調査で見る項目、無料の公表情報の使い方、比較表から受注施策へつなぐ方法を解説します。
この記事でわかること
- 工種・請負形態・施工地域から競合を選ぶ方法
- 許可情報・経営事項審査・入札情報で分かる範囲
- 比較した違いを、施工実績の説明や見積もり相談へ反映する方法
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工種と請負形態から比較する会社を絞る
建設業という大きなくくりだけでは、直接競う相手が決まりません。誰から、どの工事を、どの地域で受けたいのかを先に整理します。

民間元請・専門工事の下請・公共工事を分ける
民間の発注者から直接相談を受けたいなら、同じ用途の工事に対応する施工会社を調べます。専門工事を元請会社から受けたいなら、工種に加えて、施工できる規模や体制、取引の条件が近い会社を見ます。
公共工事では、発注機関、参加できる工事区分、地域、資格などが比較の前提になります。民間のWeb集客と同じ数字だけで、入札への取り組みを評価しないようにします。
| 増やしたい仕事 | 比較する相手 | 主に確かめる点 |
|---|---|---|
| 民間の元請工事 | 同じ顧客・用途の工事を受ける会社 | 対応範囲、実績、相談・提案までの案内 |
| 専門工事の下請 | 同じ工種・地域・規模に対応する会社 | 施工体制、担当範囲、元請が確認する情報 |
| 公共工事 | 同じ条件の案件へ参加する会社 | 参加条件、公表された入札結果、評価項目 |
建築・土木・設備と、新築・改修の条件をそろえる
同じ設備工事でも、新築工事の一部を担当する場合と、営業中の店舗や稼働中の工場を改修する場合では、必要な調整が変わります。建物の用途、工事内容、施工範囲、希望時期などが近い案件で比べます。
売上規模が似ているだけで競合と決めず、自社の商談で比較先として名前が出る会社を確認しましょう。注文住宅の会社を比べたい場合は、性能や標準仕様、保証など住宅固有の項目も必要です。
住宅の競合分析|商品・性能・価格を比較する手順住宅会社の標準仕様・性能・価格・保証を比べる手順はこちらで解説します。関連記事|マーケティングノート
施工地域と、実際に動かせる体制を合わせる
営業所が近いことと、同じ工事に対応できることは別です。施工実績の地域、案内している対応範囲、現場までの移動、自社で配置できる人員や協力会社との体制を確認します。
競合の稼働状況が公開されていなければ「受注余力は未確認」と残します。工種・顧客・地域が重なる会社を選び、確認できない施工能力を推測で補わないことが基本です。
許可・経審・入札情報は役割を分けて読む
公表情報は、会社の基本情報や過去の実績を確かめる材料です。一つの資料だけで、現在の施工品質や、すべての案件での競争力まで分かるわけではありません。

許可情報は、会社と対象業種を確認する入口にする
国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」では、建設業者の基本情報を確認できます。会社名が似た別法人や、本店と支店を混同しないよう、許可番号や所在地も照合します。
掲載内容には更新までの時間差があります。国土交通省は、新規許可や許可内容の変更について、概ね1か月程度で検索システムへ掲載すると案内しています。確認日を残し、最新の判断に必要な事項は許可行政庁などの情報も確かめます。
「概ね1ヶ月程度で検索システムに掲載」
許可情報は対象業種などを確かめる資料として使います。許可を取得しているという理由だけで、品質が高い、工期を必ず守る、現在すぐ着工できるとは評価しません。
経営事項審査は、基準日と工種をそろえる
経営事項審査、いわゆる経審は、公共工事を直接請け負う建設業者に関する客観的な審査です。経営状況や経営規模、技術的能力などを評価する制度で、一般の顧客満足度ランキングとは異なります。
公表された結果では、総合評点だけでなく完成工事高などの数値も確認対象になります。比べる際は審査基準日、工種、対象期間を残し、制度の改正前後で数値の意味が変わらないかも確かめます。
「総合評点及び完成工事高等の審査項目ごとの数値・評点」
経審の点数が高い会社でも、自社が増やしたい民間工事で直接比較されるとは限りません。結果が見つからない場合も、それだけで会社の品質や健全性を否定せず、調査対象と情報の範囲を見直します。
入札情報は、発注見通し・公告・結果を分ける
公共工事を調べるときは、発注機関の公式ページや入札情報サービス(PPI)を入口にします。発注見通しは予定、公告は参加条件などの案内、結果は実施された入札に関する情報として区別します。
たとえば沖縄総合事務局は、開発建設部が発注する工事・業務等について、見通し、公告、結果をPPIで掲示すると案内しています。自社が対象とする発注機関と工種、期間を決めて確認しましょう。
「発注見通し・発注情報(入札公告等)・入札結果」
一件の落札金額を別の工事の見積単価として使う前に、仕様、数量、施工条件、工期などを確認します。公表された範囲の結果を調べたことと、地域の全工事・全受注を把握したことも区別します。
施工実績と会社発表は、掲載範囲を確かめる
競合の公式サイトでは、工事の用途、地域、担当範囲、施工時期、取り組みの説明を見ます。元請として工事全体を担当した実績と、専門工事の一部を担当した実績は分けて読みます。
実績ページの掲載件数は、その会社の全受注件数ではありません。写真が多いことや、完成写真がきれいなことだけでも、品質・安全・利益率の優劣は確定できません。資料に書かれた事実と、そこから考えた評価を分けて残します。
施工条件と説明の差を比較表にまとめる
情報を集めたら、同じ項目へ並べます。会社の規模を競う表よりも、発注者が工事を任せる際に確認する条件を中心にすると、営業で使う違いを見つけやすくなります。

工事範囲・施工条件・見積もりの前提を比べる
施工だけか、現地調査や設計、施工後の点検まで含むかを整理します。夜間作業、稼働中の施設での施工、周辺への配慮なども、対象工事で必要な条件なら比較項目です。
| 比較項目 | 確かめる内容 | 記録する根拠 |
|---|---|---|
| 対応する工事 | 工種、用途、新築・改修、規模 | 公式案内、同条件の施工実績 |
| 担当する範囲 | 調査、設計、施工、点検の分担 | 業務説明、実績の担当内容 |
| 施工の条件 | 対応地域、工期、作業時間、調整事項 | 公開された方針と個別の確認事項 |
| 価格の条件 | 仕様、数量、含む作業、別途費用 | 同条件の見積もり・公開価格 |
| 相談の進め方 | 必要資料、窓口、調査・提案までの流れ | サイトの案内と自社の対応記録 |
公開情報で分からない条件は未確認のままにします。調査目的で架空の工事や見積もりを依頼せず、公開資料と、自社が適切に得た発注者の声から確かめましょう。
比較表は、発注者の不安を解く説明へつなげる
次は、稼働中の施設で設備改修を受けたい施工会社を想定した架空の記入例です。実在企業の調査結果やDSSの施工実績ではありません。公開ページの違いを、次に確かめることへ変える例として見てください。
| 比較項目 | 自社の現状 | 競合の掲載内容 | 次に確かめること |
|---|---|---|---|
| 実績の説明 | 完成写真と工事名が中心 | 稼働中の施工で配慮した点を説明 | 自社にも掲載できる同種の経験があるか |
| 相談の案内 | 代表電話だけを掲載 | 相談時に用意する図面や希望時期を案内 | 自社の相談で資料不足による往復が多いか |
| 改善の仮説 | 工事条件と相談の準備を説明する | 分かりやすい項目の選び方を参考にする | 変更後の相談内容と見積提出までの進み方 |
競合に詳しい説明があることから、受注率が高いとまでは分かりません。自社の発注者も同じ点を気にしているかを確かめ、掲載できる実績や実際の対応範囲を使って説明を直します。
3Cで発注者・競合・自社の条件を照らす
3C分析は、顧客・市場、競合、自社の三つから状況を整理する方法です。上の例なら、「発注者は操業への影響を気にする」「競合は施工時の配慮を説明している」「自社にも説明できる経験があるか」を照らし合わせます。
自社に経験や体制がなければ、先に対応を整える必要があります。顧客が必要とし、自社が継続して提供できる違いを、伝える強みとして選びます。表の空欄を埋めるために、根拠のない「高品質」「柔軟な対応」を並べないようにしましょう。
3C分析の競合分析とは?調査6項目・やり方と記入例顧客・競合・自社を照らす3Cの考え方と、記入例を紹介します。関連記事|マーケティングノート
得意な工事と受注後の負担から施策を選ぶ
比較で見つけた差は、施工実績の見せ方や相談の案内へ反映します。同時に、受注が増えた後も現場を動かせるかを確認し、集客だけを先行させないことが大切です。

施工実績には、用途・担当範囲・工夫を添える
発注者に近い用途の実績を選び、工事前の課題、自社の担当範囲、施工条件、実施した工夫を説明します。完成写真だけでは見えにくい調整や工程の考え方も、掲載の許可がある範囲で示します。
顧客名、施設名、図面、現場写真は、契約や掲載可否を確認して扱います。元請・共同企業体・協力会社などの立場が違う場合も、工事全体を自社だけの実績として表示しないようにします。
相談・見積提出・受注と、工事の採算を分けて追う
民間工事の集客なら、問い合わせ数だけでなく、対象地域・工種に合う相談、現地調査、見積提出、受注へ進んだ状況を記録します。対応外の依頼が多いなら、媒体を増やす前に工事の説明や対象地域を見直します。
失注や見送りの理由も、価格、仕様、時期、対応範囲、他社の採用、計画の中止などに分けます。価格が理由と聞いた場合も、同じ工事範囲を比べたのかを確認します。
受注後は、自社の原価や必要な人員、移動、手戻りなどを振り返ります。受注件数が増えたことと、現場の負担や利益が改善したことを別に確かめます。公共工事は、参加条件の確認や入札結果を別の記録として管理します。
民間工事の比較検討層との接点を増やしたい方へ
ライバルマーケティング広告では、競合の施工会社や工事事例サイトなどを閲覧する比較検討層への広告を相談できます。整理した施工地域・工種・伝えたい実績を、配信対象や見積もり相談ページの検討に使えます。
建設業向けの広告を見る公開資料を更新し、価格や入札は自社で判断する
比較表には、資料名、URL、対象時点、確認日、担当者を残します。許可や経審、工事の掲載内容が変わったら更新し、過去の条件を現在の情報として使い続けないようにします。
公開された過去の結果を調べることと、参加企業同士で受注先や金額を事前に決めることは異なります。公正取引委員会は、こうした事前の取り決めを入札談合として禁止行為に挙げています。調査を口実に受注予定や入札価格をすり合わせず、自社の条件から独立して判断します。
「受注する企業や金額などを決めて、競争をやめてしまう」
建設業の競合分析でよくある質問
競合調査で分かる範囲を押さえ、目的に合う資料から使い始めましょう。

建設業の競合調査は無料で始められますか?
公式サイトの施工実績、国土交通省の企業情報、公開された経営事項審査の結果、発注機関の入札情報、自社の営業記録から始められます。情報を集めて条件をそろえる工数は必要です。競合の非公開の原価や受注余力まで分かるものではありません。
経審の点数が高い会社を競合にすればよいですか?
点数だけでは決められません。同じ工種・地域・請負形態で顧客に比較されるかを先に確認します。経審を比べる場合も、基準日や対象工種などの条件を残し、点数を民間工事の顧客満足度や現在の施工品質と同一視しないようにします。
建設業界の見通しは競合分析にどう使いますか?
国土交通省の建設投資見通しなどは、国内市場の規模や構造を考える背景資料になります。ただし全国全体の見通しだけで、自社地域・工種の需要や受注増減は確定しません。対象年と資料の範囲を読み、自社の相談・見積もり・受注の変化と分けて使います。
「国内建設市場の規模とその構造を明らかにすることを目的」
競合はどのくらいの頻度で調べ直しますか?
一律に毎日調べる必要はありません。自社が営業方針を見直す時期に合わせ、施工実績の追加、対応範囲の変更、経審などの公表更新、対象とする案件の公告時期を押さえます。調べる会社と項目を絞り、継続できる担当と頻度を決めましょう。











