競合のバリューチェーン分析の手順と記入例

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事業活動の価値と費用のつながりを示す図

バリューチェーン分析は、事業を、製品やサービスを届ける活動に分け、どこで顧客にとっての価値や費用の差が生まれるかを調べる手法です。競合の商品や料金を比べた後に、その違いを支える活動まで考えたいときに使います。

例えば、同じ印刷物でも、入稿前の相談やデータ確認が丁寧なら、初めて注文する顧客の手間を減らせます。その対応には費用がかかりますが、減らすべき無駄なのか、選ばれる理由なのかは、金額だけでは決まりません。

この記事では、主活動と支援活動の分け方、競合と比較する情報、費用と価値の整理方法を解説します。架空の記入例と、公式情報で確認できる企業の活動も紹介します。

競合と比較するときの要点

  • 比較する事業・顧客・提供条件をそろえます。
  • 自社の実測値、競合の公表情報、仮説を分けます。
  • 一つの活動を変えたとき、別の活動へ及ぶ影響も確かめます。

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バリューチェーン分析とは?競争力を事業活動から考える

顧客への価値と、それを支える仕組みを結びつける図
顧客への価値と、それを支える仕組みを結びつける図。

顧客が選ぶ理由と、それを支える活動を結びつける

バリューチェーンは「価値連鎖」と訳されます。企業を一つのまとまりとして見るだけでなく、設計、製造、販売、支援などの活動に分け、それぞれの役割とつながりを捉えます。

調べたいのは、競合より安く提供できる理由や、顧客が追加の費用を払っても選ぶ理由です。設備がある、人員が多いという事実から、どの活動で納期や品質、使いやすさに違いが生まれているのかを考えます。

ハーバード・ビジネス・スクールの解説は、競争優位を活動の単位で考え、活動の組み方と相互のつながりに注目しています。高い価格や低い費用を支える活動を探る考え方です。

出典元:Harvard Business School「The Value Chain」

費用の大きさだけで、強みや無駄を決めない

費用が大きい活動にも、品質や安心感を支えているものがあります。反対に、費用が小さくても、確認漏れが後の手戻りを増やしている場合があります。

各活動の費用に加え、顧客への効果と他の活動への影響を記録します。「事前確認の時間を減らすと、再制作や問い合わせが増えないか」のように、事業全体で見ます。

なお、活動ごとの価値や利益が、自動的に金額で算出できるわけではありません。売上を各工程へ機械的に配分するより、まずは費用、作業時間、品質、顧客の評価を別々に把握します。

業界の競争環境や、供給の流れも必要に応じて補う

バリューチェーン分析では、価値と費用を生む活動を詳しく見ます。業界全体の利益に影響する新規参入や買い手の交渉力を調べたいなら、5フォース分析を組み合わせられます。

また、サプライチェーンは、調達先や物流会社などを含む供給の流れを捉える視点です。バリューチェーンも自社内だけで完結するとは限らず、仕入先や販売先とのつながりが価値や費用へ影響します。

競合の5フォース分析とは?五つの力・やり方と記入例競合の5フォース分析とは?五つの力・やり方と記入例業界の収益に影響する五つの力と、調査の進め方を解説します。関連記事|マーケティングノート

主活動と支援活動を、実際の業務へ置き換える

提供の流れと支援活動の関係を示す図
提供の流れと支援活動の関係を示す図。

主活動は、提供から販売後までを五つに分ける

基本のモデルでは、主活動を購買物流、製造・業務、出荷物流、マーケティング・販売、サービスに分けます。購買物流は、材料などを受け入れ、保管し、必要な場所へ回す活動です。

主活動活動の内容調べる項目の例
購買物流投入する材料などの受け入れ・保管・管理入荷の遅れ、検品、在庫、欠品
製造・業務製品を作る、サービスを提供する処理時間、品質、作り直し、対応できる量
出荷物流完成品の保管・出荷・配送納期、梱包、誤配送、受け取りやすさ
マーケティング・販売価値を伝え、購入できるようにする案内、見積もり、販売経路、注文手続き
サービス販売後の価値を保ち、高める導入支援、問い合わせ、修理、継続支援

これは分析の入口になる分類です。実際には「製造」をデータ確認、印刷、検品へ分けるなど、品質や費用の違いを説明できる単位まで具体化します。

支援活動は、主活動全体を支える仕組みを見る

支援活動は、全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達です。経営・会計・法務などの管理、採用と育成、製品や作業方法の改善、必要な資源を購入する活動が含まれます。

「支援」という名称でも、競争力への貢献が小さいわけではありません。共通の確認手順を作る技術開発や、担当者を育てる仕組みが、安定した品質を支える場合があります。

購買物流と調達が重なって見えるときは、何をしているかで分けます。材料の受け入れ・保管は購買物流、購入先の選定や条件交渉などは調達、と整理できます。同じ作業の費用を両方へ二重に計上しないようにします。

ケンブリッジ大学IfMは、五つの主活動と四つの支援活動を説明しています。物を作る企業だけでなく、サービスを提供する組織にも適用できる枠組みです。

出典元:University of Cambridge IfM「Value chain」

サービス業は、価値が届く流れに沿って書く

物の入荷や出荷がない事業では、製造業の言葉に無理に合わせる必要はありません。相談、要件の確認、提供の準備、実施、継続支援など、実際の活動を書き出します。

ただし、単なる時系列の手順書で終わらせず、集客・契約や人材育成など、提供を支える活動も確認します。同じ部門が複数の活動を担う場合もあるため、部署名だけで分類しないようにしましょう。

バリューチェーン分析の進め方と記入項目

作業費用と顧客の評価を分けて記録する図
作業費用と顧客の評価を分けて記録する図。

比較する事業・顧客・期間を決める

最初に、何を判断するための分析かを決めます。例えば「小ロット印刷の再注文を増やす」「納期を保ちながら手戻りを減らす」などです。複数の事業を一緒に分析すると、活動の違いが埋もれやすくなります。

対象商品、顧客層、注文量、提供地域、比較期間をそろえます。法人の大量発注と個人の一回限りの注文では、必要な販売や支援の活動が違うためです。

活動と受け渡しを、現場の記録から書き出す

注文から納品、その後の対応まで、誰が何をしているかを書き出します。担当者への聞き取りに加え、作業記録、問い合わせ、再制作の履歴などで、実際の動きを確認します。

一つの活動の内容だけでなく、次へ何を渡すかも記録します。例えば、見積もり時の条件が制作側へ伝わらず確認し直しているなら、問題は作業の速さより情報の受け渡しにあるかもしれません。

費用・時間・顧客への効果を分けて集める

費用は人件費、材料費、外注費、システム費などから整理します。共通費を活動へ割り振る場合は、作業時間や利用量などの基準を残し、実額と見積もりを区別します。同じ期間・範囲で集計し、合計が元の費用と合うかを確かめます。

顧客への効果は、納期を守れた割合、再制作の件数、問い合わせ内容、購入・継続の理由などで確認します。「手厚い支援」という自社の印象を、顧客が評価している証拠に置き換える作業です。

売上は事業全体で捉え、各活動がどう貢献するかを考えます。直接売上を生まない法務や品質管理も、継続して提供するために必要な活動です。

表計算ソフトでは、事実と解釈の欄を分ける

Excelなどへ記入する場合は、活動ごとに、内容、担当、費用・工数、顧客への効果、競合の確認事項、根拠、改善案を整理します。横に長くなるときは、自社の数値表と競合比較表を分けても構いません。

根拠には、資料名・URL・確認日や、集計期間を付けます。「公式に確認したこと」「自社で測ったこと」「まだ確かめていない仮説」が読み分けられれば、次の担当者も判断をたどれます。

競合分析とは?やり方6ステップ・比較項目・フレームワーク10選競合分析とは?やり方6ステップ・比較項目・フレームワーク10選競合の選び方、調査項目と、集めた情報を判断へつなぐ手順を紹介します。関連記事|マーケティングノート

競合のバリューチェーンは、公開情報の範囲で比べる

競合の事実と未確認の仮説を区別する図
競合の事実と未確認の仮説を区別する図。

公表された提供条件と、内部の仕組みを分ける

競合の公式サイト、料金表、利用条件、導入事例、決算・事業資料などから、確認できる活動を集めます。短納期、受け取り方、相談範囲など、顧客に示された条件から比べると着手しやすくなります。

一方、掲載価格から原価や利益率は分かりません。納期が短い理由も、設備、在庫、外注、注文条件など複数考えられます。内部の工程が公表されていなければ、理由は仮説として残します。

IBMは、競合のバリューチェーンが公開される可能性は低いとしたうえで、関連するプロセス、事業モデル、業績の指標などを比較する考え方を説明しています。

出典元:IBM「バリューチェーン分析とは何か」

同じ注文条件で比べ、分からない項目を残す

価格や納期は、数量、仕様、締切時刻、修正範囲、配送地域などをそろえて確認します。「最短」と書かれた日数と通常の提供条件を混ぜると、活動の違いを誤って判断します。

自社で測った作業時間と、競合の公表納期も別の指標です。内部の時間や原価が不明なら、空欄を推定値で埋めず「未確認」とします。それでも、顧客へ提示される条件の違いから、自社で改善する候補は考えられます。

架空の小ロット印刷サービスで比較する

次の表は、説明用に仮定した二つのサービスです。実在企業の調査結果やDSSの実績ではありません。競合の内部費用が分からない状態でも、提供条件と自社の課題を分けて記入できます。

活動自社Aの仮定競合Bの仮定次に確かめること
販売・注文担当者が仕様を聞き、見積もる標準仕様を画面で選んで注文する初回注文で迷う項目と確認回数
制作前の確認入稿データを個別に確認するチェックの提供範囲が案内されている同じ仕様での対象範囲と追加対応
出荷・納品個別に納期を回答する条件別の出荷予定が示されている締切・数量・地域をそろえた納期
販売後の支援担当者が過去の注文を探す再注文の方法が案内されている顧客の再注文時の手間
費用・工数自社の記録から集計する内部の原価・工数は未確認自社の確認・検索作業にかかる時間

この段階で「Bは自動化されているから原価が低い」とは結論づけません。Aが初回の相談を強みにするなら、その価値を保ちながら、再注文の検索や入力を減らせるかを検討します。

企業の活動例から、改善と差別化へつなげる

活動の前後への影響を確かめながら改善する図
活動の前後への影響を確かめながら改善する図。

IKEA:設計と梱包、輸送を一緒に考える

IKEAは公式に、製品設計の一部として、部品を効率よく小さく平たく梱包する方法を検討すると説明しています。機能と品質を保ちながら、梱包に合わせて製品の細部や形状を見直す場合もあるとしています。

また、積み重ねやすく場所を取らない梱包は、輸送空間を使い、費用を抑える取り組みにつながっています。物流部門の作業だけを見るより、設計と輸送の関係まで確認するための例として読めます。

IKEAの公式説明では、製品ごとに梱包を工夫し、輸送空間の無駄を減らす取り組みが紹介されています。ここでは公表された活動のつながりを取り上げています。

出典元:IKEA「IKEA wrapped – our packaging journey」

ユニクロ:顧客の声を開発や生産へ戻す

ファーストリテイリングの公式説明では、ユニクロは企画、生産、物流、販売を一貫して管理し、顧客の声から商品の開発・改善を進めています。カスタマーセンターで集めた意見を分析し、社員へ共有する仕組みも説明されています。

一貫管理は、すべてを自社の工場で作るという意味ではありません。同じ公式ページには、ほとんどの商品の生産を取引先工場へ委託し、生産部などが品質や進捗を管理すると書かれています。

自社へ応用するなら、顧客対応で得た情報を、どの担当者へ、どんな判断に使うために渡すかを考えます。企業規模や生産量をまねるのではなく、活動をつなぐ仕組みに注目します。

ファーストリテイリングは、ユニクロの各活動と、顧客の声を商品改善へ反映する仕組みを説明しています。以下は2026年3月9日更新の公式ページです。

出典元:ファーストリテイリング「ユニクロのビジネスモデル」

顧客への効果と全体の費用で、改善案を試す

改善案には、変える活動、保ちたい顧客価値、他の活動への影響、担当者、確認する指標を付けます。先ほどの印刷サービスなら、再注文の受付を整理し、顧客の入力負担と、担当者が過去の注文を探す時間を確認する進め方が考えられます。

改善する候補保ちたい価値・注意点確かめる指標
再注文の受付を整理初回の個別相談は維持する。変更した仕様を見落とさない検索・確認の時間、入力の手間、誤った再制作
入稿前の案内を改善分からない点は担当者へ相談できるようにする不足情報の確認回数、入稿後の手戻り
納期条件を見える化対応できる数量・締切・配送条件をそろえる納期の問い合わせ、回答時間、納期の達成状況

一部の作業時間が短くなっても、再制作や問い合わせが増えれば見直しが必要です。試す範囲と期間を決め、改善前後で注文の量・難しさが違わないかも確認します。

競合のバリューチェーン分析でよくある質問

分かる範囲と根拠を整理して分析する図
分かる範囲と根拠を整理して分析する図。

競合の原価が分からなくても分析できますか?

公開されている提供条件、事業モデル、納期、支援範囲などから比較できます。内部の原価・工数は未確認として残し、価格から利益率を逆算しないようにします。自社の実測値と、他社の公表情報は区別して使います。

バリューチェーン分析とSWOT・VRIO分析はどう違いますか?

バリューチェーン分析は、価値や費用が生まれる活動と、そのつながりを見ます。SWOTは内部の強み・弱みと外部の機会・脅威を整理し、VRIOは資源や能力が競争優位を支えるかを検討します。目的に応じて補い合えますが、毎回すべてを行う決まりではありません。

OpenStaxは、VRIOを企業の資源や能力を評価する道具と説明し、価値・希少性・模倣・組織の四つの問いを挙げています。

出典元:OpenStax「The Internal Environment」

Excelのテンプレートには何を記入しますか?

活動、内容、担当、費用・工数、顧客への効果、競合の確認事項、根拠、改善案を記入します。費用を割り振った基準や確認日も残し、事実と仮説を分けます。自社の数値と競合比較を、別の表にしても構いません。

IKEAやユニクロの事例を、そのまま取り入れてよいですか?

活動のつながりを考える参考にはなりますが、規模や顧客、設備、取引条件が違います。公式に公表された活動と解説者の分析を分け、自社で実行したときの費用と顧客への効果を確かめます。有名企業が分析を実施したことや成功の原因は、公開された活動の説明だけでは断定できません。

競合との違いを、集客の検討へ進めたい方へ

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