ホテルの競合分析では、同じ宿泊目的で比較される施設を選び、宿泊日・人数・客室・食事・取消条件をそろえて、料金と滞在価値の違いを調べます。その結果から、プラン、案内、予約導線、サービスのどこを改善するか決めます。
近隣ホテルの最安値に合わせるだけでは、異なる条件の商品を比べてしまいます。また、予約サイトで空室が見つからなくても、ホテル全体が満室とは限りません。比較対象の選び方、調査表への記録、公開データの読み方、改善後の検証までを順に紹介します。
この記事でわかること
- 比較対象となるホテルと、調査目的の決め方
- 宿泊料金・プラン・予約導線を同条件で調べる方法
- 掲載情報の限界と、差別化を収益につなぐ確認方法
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宿泊目的から、比較するホテルを選ぶ
最初に、増やしたい宿泊を決めます。平日の一人出張と、週末の家族旅行では、比較される施設も、必要とされるサービスも違います。

売りたい日・客室・客層を絞る
自館の予約・宿泊実績を、曜日、季節、人数、客室タイプ、販路などに分けて見ます。「平日の空室を減らしたい」「家族向け客室の価値が伝わらない」など、今回の調査で決めたいことを一つ選びましょう。
調査対象日は、通常の平日、週末、連休、地域イベントの開催日などから、課題に関係する日を選びます。一日だけの料金差を、年間を通じた競争力と考えないことが大切です。
近さに加えて、旅行者が代わりに選ぶかを考える
比較を続ける施設のまとまりは「競合セット」と呼ばれます。距離、価格帯、客室の広さ・定員、交通、食事、館内設備、滞在目的などから、同じ旅行者の候補になりそうな施設を選びます。
同じ駅前でも、大型宴会向けホテルと小規模な一人出張向けホテルでは、比較する目的が異なる場合があります。直接比較する施設と、サービスや見せ方の参考にする施設を分けておくと、価格判断がぶれにくくなります。
プライムコンセプトは、立地・価格・提供価値の近い直接競合と、同じ客層を狙う間接競合を分け、宿泊客に比較検討した施設を聞く方法も紹介しています。
出典元:プライムコンセプト|ホテル業界における競合施設の選定方法(要約)
自館が選ばれる理由も、同じ項目で書き出す
自館についても、客室、食事、アクセス、過ごし方、予約の条件を記録します。「設備が新しい」だけでなく、「家族が同じ部屋で過ごせる」「早い出発でも朝食を取りやすい」など、宿泊目的とのつながりを考えます。
強みは、口コミで褒められている点や、予約時の質問、実際に提供できるサービスと照合します。ホテル全体のマーケティングへ広げる場合は、客層・商品・販路をつなぐ下記の記事も参考になります。
ホテルマーケティングとは?戦略の立て方・集客施策・事例を解説客層・宿泊商品・販路をつなぐ、ホテルのマーケティング全体を紹介します。関連記事|マーケティングノート
料金は、宿泊日とプラン条件をそろえて比較する
ホテルの表示価格は、日付、人数、部屋、食事、取消条件などで変わります。最安値だけを書き写さず、何が含まれる料金なのかを記録します。

観測した日と、泊まる日を両方残す
「いつ調べたか」と「いつ泊まる条件か」は別です。同じ宿泊日でも、1か月前と前日では販売するプランや料金が変わることがあります。調査日時と宿泊日、泊数、人数、検索した予約サイトを残します。
予約までの日数による変化を見たい場合は、同じ宿泊日を継続して確認します。前週の料金と比べるときも、同じ曜日というだけでなく、休日やイベントの影響を確認しましょう。
人数・部屋・食事・取消条件をそろえる
一人当たりか一室当たりか、何泊分かを最初に確認します。客室の広さ、ベッド、禁煙・喫煙、食事、特典、支払時期、取消料が発生する時期も見ます。消費税や宿泊税、必須の追加料金など、含まれる金額と別途支払う金額を分けます。
| 比較の軸 | そろえる条件 | 記録する情報 | 混同しやすい点 |
|---|---|---|---|
| 日程・人数 | 同じ宿泊日・泊数・人数 | 観測日時、宿泊日、検索条件 | 一人料金と一室料金 |
| 客室 | 定員・広さ・寝具等が近い部屋 | 客室名と具体的な設備 | 名称が似ていても内容が違う |
| 食事・特典 | 素泊まり、朝食等の範囲 | 内容、利用時間、追加費用 | 朝食付きと食事なしの混在 |
| 予約条件 | 支払・取消・変更条件 | 割引条件、税・必須料金 | 返金不可と取消可能の混在 |
条件をそろえられないときは、違いを残したまま別の商品として扱います。条件の違いを消して、安い・高いだけで並べないようにします。
比較表では、価格差の理由まで確認する
次は、同じ架空の宿泊日・大人2人・一室一泊・朝食付き・近い客室条件で比較する例です。説明用の総額で、実在施設の料金や相場ではありません。必須の税・追加料金は含めたものとします。
| 調べた商品 | 一室一泊の総額 | 取消条件 | 比較するときの判断 |
|---|---|---|---|
| 自館・当初の表示 | 22,000円 | 予約後は返金不可 | A館とは条件が異なる |
| 競合A館 | 24,000円 | 宿泊3日前まで無料 | 同じ取消条件の商品と比較する |
| 自館・条件を変更 | 25,000円 | 宿泊3日前まで無料 | A館との差は1,000円高い |
最初の表示では自館が安く見えますが、取消条件をそろえると価格の関係が変わる例です。価格差だけでなく、アクセス、客室、食事など、その差を納得して選べる理由が伝わっているかも確かめます。
公式サイト・OTA・口コミから、分かる範囲を読み分ける
公開情報は、旅行者から見える商品の調査に役立ちます。一方、掲載価格は実際に販売した平均単価とは違い、掲載在庫も施設全体の空室とは限りません。

公開情報を集め、事実と改善仮説を分ける
OTAはオンライン旅行予約サイトのことです。公式サイトとOTAで、同じ検索条件の料金・プラン・写真・予約条件を確認します。交通や館内設備、食事の時間などは、公式の施設案内でも確かめます。
「家族向け客室の写真がない」は確認した事実、「部屋の使い方が伝わらず候補から外れるのでは」は仮説です。調査表では、情報源、確認日、事実、改善案を分けます。架空予約を作ったり、調査だけの問い合わせを繰り返したりせず、公開範囲で確認しましょう。
掲載在庫がなくても、実稼働率までは分からない
あるOTAで販売が見えない理由には、売り切れのほか、売止め、その販路へ出す部屋数の調整、最低泊数などの販売条件も考えられます。掲載在庫の変化だけから、競合の予約件数や売上を断定しないようにします。
メトロエンジンは、掲載在庫・残室率はOTA等で観測した販売情報であり、ホテル全体の空室数、実稼働率、予約件数とは異なると説明しています。売止めや販路への配分も変化の要因になります。
出典元:メトロエンジン|ベーシックプラン・掲載情報の説明(要約)
料金比較ツールを選ぶ場合は、対象の予約サイト、更新時刻、人数・食事・客室の絞り込み、欠測時の表示、履歴、費用を確認します。「データがない」をゼロへ置き換えず、取得できた範囲で判断します。
口コミと地域統計は、別の役割で使う
口コミは、客室、清掃、食事、接客、アクセスなどの話題に分け、投稿日や利用場面も見ます。総合点だけでなく、どんな体験が評価されているかを読むと、案内やサービスの改善案を考えやすくなります。一部の投稿を全宿泊客の意見と考えないようにしましょう。
観光庁の宿泊旅行統計調査は、地域や施設タイプごとの状況を把握する資料です。集計範囲、対象月、速報・確定の違いを確認し、一施設の実績と区別します。全国平均をそのまま自館の目標にはしません。
観光庁は、宿泊旅行統計調査の2026年1月分から、施設の区分けに用いる基準を「従業者数」から「客室数」へ変更したと案内しています。
出典元:観光庁|宿泊旅行統計調査(要約)
前年との変化を見る場合は、こうした調査方法の変更も確認します。公開統計は地域の背景、公開料金は旅行者に見える商品、自館の予約・会計データは自館の実績という役割を分けます。
比較から改善を選び、売上と費用で確かめる
競合のサービスを全部増やす必要はありません。狙う宿泊客が必要とし、自館の設備・人員・費用で提供できる案を優先します。

価格・滞在体験・予約のしやすさから一つ選ぶ
家族旅行が課題なら、定員、寝具の配置、荷物を広げる場所、食事、移動のしやすさを確認します。自館に既にある価値が伝わっていなければ、まず写真と説明を整える案が考えられます。
平日の出張客が課題なら、朝食やチェックアウトの時間、仕事をする場所、アクセスの案内を見直せます。新しい特典を作る場合は、原価と清掃・フロント・調理の対応を先に確認します。広告で伝える内容は、実際のプランと予約画面へそろえます。
ADR・稼働率・RevPARの分母をそろえる
自館の結果を見る基本指標は、平均客室単価のADR、客室稼働率、販売可能な一室当たりの客室売上であるRevPARです。同じ期間と集計基準を使い、表示料金や宿泊人数と混ぜないようにします。
| 指標 | 計算の基本 | 確かめること | 混同しないもの |
|---|---|---|---|
| ADR | 客室売上÷販売した延べ室数 | 販売した客室の平均単価 | 公開された最安料金 |
| 客室稼働率 | 販売した延べ室数÷販売可能な延べ室数 | 用意した客室が売れた割合 | OTAの掲載在庫、定員の稼働率 |
| RevPAR | 客室売上÷販売可能な延べ室数 | 単価と稼働を合わせた売上 | 食事等も含む総売上、利益 |
CoStarのSTR用語集では、ADRを客室売上÷販売室数、稼働率を販売室数÷販売可能室数、RevPARを客室売上÷販売可能室数として説明しています。
出典元:CoStar|STR Benchmark Glossary(要約)
例えば一日40室を販売でき、30室を平均16,000円で販売したという仮定なら、客室売上は480,000円、稼働率は75%、RevPARは12,000円です。計算用の例で、業界平均や実績ではありません。複数日なら販売可能室数も日ごとに積み上げます。
税、食事、サービス料、休止客室などの扱いは、使う指標・データサービスの定義を確認して統一します。比較先の実績データを使う場合も、対象施設、期間、売上の範囲、集計方法がそろうかを確かめます。
予約件数だけでなく、実宿泊と追加費用まで追う
改善前に、対象の宿泊日、変える内容、確認日、判断する指標を決めます。予約時点の件数と、取消後に実際に宿泊した室数を分け、予約までの日数や販路構成も見ます。地域イベントや販売可能な部屋数の違いを残して比べましょう。
RevPARが上がっても、OTA手数料、広告費、特典や朝食の原価、清掃、人件費などが増えれば、利益は同じようには増えません。売上の改善と、費用を差し引いた結果を合わせて確認します。
効果が見えた案は続け、現場の負荷や費用が大きい案は条件を見直します。担当者と次の確認日を決め、比較表を更新していきましょう。予約ペース、価格、在庫、販路をつなぐ詳しい運用は、収益管理の記事で紹介しています。
ホテルのレベニューマネジメントとは?ADR・稼働率・RevPARで始める収益管理予約ペースと価格・在庫・販路を合わせて考える収益管理の手順を紹介します。関連記事|マーケティングノート
比較中の旅行者へ、自館の滞在価値を伝えたい方へ
ライバルマーケティング広告では、競合施設や宿泊プランなど、比較されるページを踏まえた広告配信を相談できます。売りたい日程とプランを整理して、旅行・宿泊業向けのサービスをご確認ください。
宿泊業向け広告の詳細を見るホテルの競合分析でよくある質問
比較対象、調査の頻度、公開情報と収益指標の扱いを整理します。

比較対象のホテルは、何を基準に選びますか?
同じ宿泊目的で旅行者の候補になるかを基準に、立地、価格帯、人数、客室、食事、交通、設備などを見ます。直接料金を比較する施設と、サービスの参考にする施設は分けます。
競合調査は、どれくらいの頻度で行いますか?
売りたい宿泊日と、料金・在庫が変わる速さに合わせて決めます。価格や掲載在庫は同じ宿泊日を継続して確認し、設備やサービスの比較は新規開業・改装・プラン変更などの機会にも更新します。すべてを同じ頻度で調べる必要はありません。
OTAの空室表示から、競合の稼働率は分かりますか?
ホテル全体の正確な実稼働率は分かりません。掲載在庫には、売止め、販路への配分、泊数等の販売条件も影響します。公開料金も、実際に販売した平均客室単価とは別です。
稼働率が高いホテルは、利益も大きいのですか?
稼働率だけでは判断できません。客室単価、販売可能室数、手数料、食事・特典の原価、清掃や人件費などで結果が変わります。ADR・RevPARと、費用を差し引いた結果を合わせて見ます。











