STP分析は、市場を分ける「セグメンテーション」、狙う顧客を選ぶ「ターゲティング」、競合との比較から立ち位置を決める「ポジショニング」をつなげて考える手法です。競合調査の結果を、誰に、どのような価値を届けるかという判断へ使います。
競合の料金や機能を一覧にしても、それだけでは自社が狙う顧客は決まりません。同じ商品でも、買う目的や選ぶ条件が違えば、比べられる相手と伝えるべき価値が変わるからです。
この記事では、STP分析に競合情報をどう使うかを、市場の分け方、ターゲットの選定、立ち位置の決め方から解説します。架空の商品撮影サービスを例に、調査表から施策へつなげる流れも紹介します。
STP分析を進めるときの要点
- 顧客を分類した理由が、利用目的や選ぶ条件の違いに結びつくかを見ます。
- 競合が少ないかだけでなく、需要・届く手段・自社の提供体制を比べます。
- 選んだ顧客と立ち位置を、サービス内容・価格・案内へ反映します。
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STP分析とは?競合情報を「誰に何を届けるか」へつなぐ

S・T・Pの三つを、つながる判断として考える
STPは、Segmentation、Targeting、Positioningの頭文字です。市場を共通のニーズなどで分け、その中から対象とする顧客を選び、競合と比べてどう認識してもらいたいかを定めます。
例えば、写真を必要とする顧客を「商品をECへ掲載したい」「広告の世界観を表現したい」と分けると、必要な仕上がりや相談内容は異なります。どちらを対象とするかによって、整えるサービスと、比べる競合も変わります。
三つの欄を別々に埋めるより、「この顧客は何を求め、その条件を自社がどう満たすか」が一続きに説明できるかを確かめます。検討中に合わない点が見つかれば、市場の分け方や対象へ戻って修正します。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、STP分析を、市場を細分化し、ターゲット市場を定め、他社との比較から自社の立ち位置を決める手法と説明しています。
競合の調査は、ターゲットの選定前から使う
競合情報が必要なのは、最後のポジショニングだけではありません。市場を分ける段階では、他社がどんな用途へ商品を提供しているかを調べます。ターゲットを選ぶ段階では、各顧客層の選択肢や、満たされていない条件を確認します。
ただし、競合の顧客像をそのまま自社のターゲットにする必要はありません。公式サイトの訴求から分かるのは、企業が伝えている提供内容までです。実際の購入者や、売れている理由は、顧客調査や自社の受注・失注記録などで補います。
3C分析で市場・顧客、競合、自社の情報を整理しているなら、その結果を使えます。情報を集め直すより、今回の市場選びに必要な根拠がそろっているかを点検しましょう。
3C分析の競合分析とは?調査6項目・やり方と記入例市場・顧客、競合、自社の情報を照らし合わせる調査手順を紹介します。関連記事|マーケティングノート
セグメンテーション:顧客の用途と選ぶ条件で市場を分ける

属性・地域・価値観・行動から、違いを探す
セグメンテーションは、似たニーズや特徴を持つ顧客をグループに分ける作業です。年齢や地域のような把握しやすい属性に加え、利用する場面、重視する点、購入頻度などからも分けられます。
分類したら、グループごとに必要な商品や説明が変わるかを確かめます。同じ年齢でも用途が違えば選ぶ条件は異なり、年齢が違っても同じ困りごとを持つ場合があります。
| 切り口 | 調べる内容の例 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 属性・地域 | 年齢、世帯、職業、居住地、商圏 | 必要な仕様や購入方法に違いがあるか |
| 価値観・重視点 | 価格、品質、手間、相談のしやすさ | 何を優先し、何を妥協するか |
| 用途・行動 | 利用場面、購入頻度、導入経験、選び直す時期 | どの場面で、何が必要になるか |
| 法人の条件 | 業種、企業規模、導入環境、購買体制、業務課題 | 導入や運用を妨げる条件が何か |
中小機構J-Net21は、小売店の顧客ターゲットを考える際、属性や地域に加え、購入基準や使用頻度などの心理・行動面を組み合わせ、来店・購買動機を把握する重要性を説明しています。
BtoBでは、企業の属性と購入に関わる人を分けて見る
法人向けでは、業種や従業員数に加え、使っている設備・システム、解決したい課題、導入経験などを調べます。同じ規模の会社でも、専任担当者がいるか、既存システムと接続する必要があるかで、求める支援は変わります。
また、利用する担当者と、購入を承認する人が同じとは限りません。現場が使いやすさを求め、管理者が費用や運用体制を確認するなら、誰のどの判断に必要な情報かを分けて残します。
競合の「中小企業向け」という表現だけから、具体的な購入条件を推測しないようにします。導入事例に書かれた課題や体制は参考になりますが、その一社の条件が顧客全体に当てはまるとは限りません。
OpenStaxの教材は、法人市場の分類に、企業属性、利用技術、ニーズ、顧客価値、行動などの切り口を挙げています。また、法人の購入判断には複数の役割が関わる場合があると説明しています。
分類を仮置きし、顧客の言葉と行動で確かめる
初めから正しい分類が決まるとは限りません。商談や問い合わせの内容、購入・継続利用の記録、聞き取りから、共通する目的と違いを探します。
「価格重視」と分類した顧客が、実際には追加料金の分かりにくさを嫌っているかもしれません。何を買ったかに加えて、比較した相手、迷った条件、選ばなかった理由を確認すると、必要な提供内容を考えやすくなります。
記録には、調べた人数や案件、期間、質問内容を残します。少数の声を市場全体の比率へ広げず、まだ根拠がない分類は仮説として扱います。グループの差が見えなければ、分類をまとめ直すこともできます。
ターゲティング:需要・競合・自社の条件から対象を選ぶ

市場規模に加え、到達できるかと提供できるかを見る
分類したすべての顧客へ、同じ優先度で対応する必要はありません。市場の規模や需要の変化、競合の提供内容、自社の技能・人員・予算を照らし合わせ、優先して取り組む顧客層を選びます。
大きい市場でも、顧客へ接する手段がなく、必要な支援を用意できなければ実行は難しくなります。小さい市場では、対象顧客の数だけでなく、提供にかかる費用と継続的な需要を確かめます。
| 確認する条件 | 調べる問い | 根拠の例 |
|---|---|---|
| 需要と規模 | その課題を持ち、費用を払う顧客がいるか | 市場統計、実際の相談、購入記録 |
| 競合の選択肢 | 今の方法では何が満たされていないか | 他社の提供条件、比較・失注の理由 |
| 到達する手段 | 顧客へ案内し、相談につなげられるか | 既存の取引、検索・紹介・展示会などの接点 |
| 提供体制と採算 | 必要な品質と費用で続けて提供できるか | 作業時間、原価、受注可能な量 |
| 見分け方と検証 | 対象を識別でき、反応や採算を確かめられるか | 対象条件、問い合わせ・購入・対応費用の記録 |
表の点検項目は、自社で判断するための整理です。すべてを機械的に点数化して合計するより、採用した条件と不足する根拠を言葉にしましょう。
OpenStaxは、有効な市場区分の条件として、到達できること、区分の違いがあること、実行できること、測定できること、取り組みに見合う規模があることを挙げています。
出典元:OpenStax「Essential Factors in Effective Market Segmentation」
競合の少なさより、顧客に残る困りごとを確認する
競合が少ない市場にも、まだ満たされない需要がある場合と、需要自体が小さい場合があります。顧客が内製や既存の代替手段で十分と感じていれば、提供者が少なくても販売は容易ではありません。
反対に競合が多くても、特定の用途、対応範囲、購入時の不安に違いをつくれる可能性があります。企業の数だけで候補を外さず、どの条件で比較され、どこに不満や手間が残るかを確かめます。
競合の料金が低いことを、そのまま自社の値下げ理由にしないようにします。提供範囲と継続的な採算をそろえて、今回選んだ顧客へ何を届けられるかを考えます。
集中するか、複数の顧客層へ分けて提供するかを決める
特定の顧客層に集中する方法、複数の顧客層へ異なる内容を届ける方法、市場の共通ニーズへ同じ商品を届ける方法があります。対象を一つに絞ることだけがSTP分析の結論ではありません。
複数の顧客層に対応するなら、それぞれの商品条件、案内、販売経路を用意する負担も見ます。集中するなら、その顧客層の需要変化へ依存しすぎないかを確認します。既存顧客への対応と、新たに獲得する顧客の優先順位は分けて考えられます。
ペルソナを作る場合は、選んだ顧客層の課題と購入場面を具体化するために使います。架空の人物像を詳しく書くことを、需要や購入意思を確認した証拠にしないようにしましょう。
ポジショニング:競合との違いを、顧客に選ばれる価値へ変える

顧客が実際に比較する選択肢を並べる
競合は、同じ業界の有名企業だけから選ぶのではなく、対象顧客が購入時に迷った商品・方法から探します。外注か内製か、標準プランか個別対応かなど、購入場面に沿って比較します。
公式の提供内容・料金・支援範囲と、顧客からの評価は区別します。他社の説明が短いから支援が弱い、と推測せず、案内で確認できない項目は未確認として残します。
自社についても、提供できる機能だけでなく、必要な技能、受注量、品質を維持する手間まで確認します。違いがあっても、対象顧客が重視しなければ選ばれる理由にはなりません。
対象顧客・解決する課題・提供価値・根拠を一文にする
立ち位置は、「誰の、どんな場面の課題に、どの価値を提供し、何を根拠にそう言えるか」で整理します。社内の判断基準にする文章なので、最初から短い広告コピーに仕上げる必要はありません。
例えば、説明用の仮定として「初めてECへ商品を掲載する小規模事業者へ、撮影条件の整理から納品形式の確認まで支援し、初回の準備を進めやすくする撮影サービス」と置けます。その約束を、事前の打ち合わせや対応範囲で実際に支えられるかを点検します。
「高品質」「手厚い」「最安」といった言葉だけに頼らず、対象顧客にとって何が違うのかを説明します。希望する評価と、顧客が実際に感じた評価の間に差があれば、商品条件や説明を見直します。
OpenStaxは、ポジショニングを、顧客に商品・サービスをどう考え、感じてもらいたいかを決め、伝える過程と説明しています。立ち位置の文章には対象市場、満たすニーズ、競合との違いなどを含めています。
マップは比較の補助として使い、空白の需要を確かめる
ポジショニングマップを作る場合は、顧客が選ぶときに重視する二つの軸で、各社の位置を示します。料金や仕様の比較図なのか、顧客調査で得た認識を示す図なのかも明記します。
空白があっても、その場所に購入したい人がいるとは限りません。自社を右上へ置くことを目的にせず、違いを顧客が必要とするか、提供を続けられるかを調べます。作図の手順と軸の具体化は、次の記事で詳しく紹介しています。
競合ポジショニングマップの作り方|軸・比較例・Excel比較軸の決め方、根拠表からの配置、Excelでの作図を確認できます。関連記事|マーケティングノート
商品撮影サービスの記入例から、施策へつなげる

市場の分け方と対象、立ち位置を一枚に整理する
以下は、架空の商品撮影サービスを使った記入例です。実際に市場調査をした結果や、DSSの提供サービス・実績ではありません。
| 項目 | 説明用の仮定 | 実際に確認する根拠 |
|---|---|---|
| S:市場を分ける | 商品画像を必要とする事業者を、EC掲載・広告表現などの用途と、社内の撮影体制で分ける | 利用目的、担当者、撮影頻度、必要な納品物 |
| T:対象を選ぶ | 初めてECへ少量の商品を掲載し、撮影体制がない小規模事業者を優先する | 相談の量、支払いの意向、接点、対応費用 |
| P:立ち位置を決める | 撮影条件の整理と掲載用の納品確認まで支援し、初回の準備を進めやすくする | 競合の対応範囲、顧客の選定理由、自社の対応体制 |
この例では、企業規模だけで区切らず、用途と撮影体制を組み合わせています。ただし、その分け方が有効か、費用を払う需要があるかは、実際の相談や調査で確かめる必要があります。
サービス内容・価格・販売経路・説明をそろえる
仮定した顧客が初回の準備に困っているなら、撮影前に確認する項目、商品を送る手順、納品する画像の形式を分かりやすく案内します。見積もりでは、含まれる作業と追加対応の条件をそろえます。
そのうえで、誰が問い合わせに対応し、どの経路で案内し、何を広告やページで説明するかを決めます。「準備から支援する」と伝えながら、申し込み前にすべての撮影条件を顧客自身に決めてもらう設計なら、約束と実際の体験が合っているか見直します。
こうした具体化には、商品・価格・流通・販促を整理する4Pの視点を使えます。STPで決めた顧客と価値を、提供方法までつなげるための使い方です。
大和総研は、STPによる顧客・ニーズ・強みの整理を戦略策定の土台とし、具体的な施策の検討に4P分析などを組み合わせる考え方を紹介しています。
出典元:大和総研「STP」
反応と対応費用を見て、仮説を更新する
新しい案内やプランは、対応できる範囲で試します。問い合わせの数だけでなく、どの用途の相談が来たか、何を比べて選ばれたか、準備や修正にどれだけ時間がかかったかを記録します。
対象の顧客から相談が来ないなら、接点や説明、需要の仮説を点検します。受注できても対応費用が想定より大きければ、含める作業や価格を見直します。結果の良し悪しを広告だけの原因にせず、対象・価値・提供条件のどこに違いがあったかを確かめます。
事実、そこから考えた仮説、試した対応を分けて残すと、次の見直しで判断をたどれます。一度作ったSTP表を守り続けるより、新しく分かった顧客の選び方を反映します。
競合を踏まえたSTP分析でよくある質問

3C・SWOT・STP・4Pは、どの順番で使いますか?
一つの進め方は、3Cなどで市場・競合・自社の情報を集め、SWOTで機会や課題を整理し、STPで対象顧客と価値、4Pで具体的な提供方法を考える流れです。すべてを毎回使う決まりではありません。検討中に根拠が足りないと分かれば、調査や前の判断へ戻ります。
ターゲットを一つに絞る必要がありますか?
一つに限定する必要はありません。特定の顧客層へ集中する方法のほか、複数の顧客層へ異なる内容を提供する方法もあります。違いに応じた商品・案内を用意できるか、費用と体制を確認して決めます。
競合がいない市場を見つければ成功しますか?
競合の少なさだけでは判断できません。顧客が既存の方法で満足している、需要が小さい、提供を続ける費用が高いといった理由も考えられます。実際の困りごと、支払いの意向、顧客へ届く手段と自社の採算を確かめます。
有名企業のSTP分析事例は、そのまま参考にできますか?
市場の分け方や比較する視点は参考になりますが、企業の公表情報と、解説者が整理したターゲットや立ち位置を分けて読みます。第三者の分析例だけから、その企業が実際にSTP分析を行い、成果を上げたとは断定できません。対象時点・地域・事業の違いも確認します。
顧客と競合の調査を、集客の検討へ進めたい方へ
届けたい顧客と伝える価値が決まったら、接点の持ち方を検討します。ライバルマーケティング広告の配信対象や仕組みは、サービスページでご確認ください。
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