競合分析でSWOT分析を使う目的は、他社との違いを踏まえて、自社が取る施策を考えることです。顧客が選ぶ理由を比べ、その結果を「強み・弱み・機会・脅威」の4要素に整理します。
たとえば、競合より対応範囲が狭くても、特定の地域や用途では自社の対応の細かさが選ばれる理由になるかもしれません。何が強みになるかは、比較する相手と顧客の求める条件によって変わります。
この記事では、比較する競合と項目の選び方、SWOTの記入例、分析結果から施策を選ぶ方法を解説します。例には架空の設備保守サービスを使い、情報が足りないときの扱いも示します。
この記事でわかること
- 競合調査とSWOT分析の役割、4要素の分け方
- 比較する相手・項目・根拠をそろえる方法
- クロスSWOTから、実行する施策を選ぶ手順
広告サービス紹介|ライバルマーケティング広告
競合分析でSWOTを使う目的
競合調査で集めた情報は、それだけでは自社の方針になりません。SWOTは、他社や市場の動きと自社の条件を照らし合わせ、どこに力をかけるかを考えるために使います。

強み・弱みは自社、機会・脅威は外部の条件
SWOT(スウォット)分析は、自社の状況を4つに分けて考える方法です。自社が持つ技術、人員、業務の仕組みなどを、顧客にとっての価値や事業上の影響から評価します。
- 強み(S):顧客に選ばれる理由となる、自社の能力や資源
- 弱み(W):顧客の要望や事業の目標に対して、不足する自社の条件
- 機会(O):顧客の要望の変化など、自社に有利に働く外部の条件
- 脅威(T):競合の新サービスなど、自社に不利に働く外部の条件
「自社は夜間の対応要員が足りない」は弱みです。「競合が夜間対応を始めた」は外部で起きた変化なので、対象顧客の選択に影響するなら脅威として整理します。同じ対応時間の話でも、何を記述するかで分類が変わります。
中小機構は、SWOTを自社の内部環境に関する強み・弱みと、市場や競合などの外部環境に関する機会・脅威に分けて説明しています。外部の変化が有利か不利かも、自社の事業に照らして判断します。
出典:中小機構「マンガでわかる『SWOT分析』」(要約・2026年10月23日確認)
競合との比較で、自社の評価に理由を付ける
「品質がよい」「価格が高い」とだけ書いても、どの顧客に、何と比べてそう言えるのかが分かりません。品質なら故障の少なさや説明の分かりやすさ、価格なら契約範囲や追加料金まで比べる必要があります。
競合比較は、4つの欄を埋めるためではなく、自社の評価を具体的にするために行います。比較した結果、業界で一般的な対応だと分かれば、それだけを差別化の理由にはしにくくなります。一方、競合にも共通する不足であっても、顧客の利用を妨げるなら改善が必要です。
競合分析とは?やり方6ステップ・比較項目・フレームワーク10選競合分析全体の進め方と比較項目を確認したい方に。関連記事|マーケティングノート
比較する競合と調査項目の選び方
最初に「誰の、どの用途について、何を決める分析か」をそろえます。比較する相手や条件が広すぎると、会社全体の印象が並ぶだけになり、施策を選びにくくなります。

同じ顧客が、同じ用途で検討する相手を選ぶ
会社の規模や知名度だけで競合を選ばず、商談で比較された相手、検索で一緒に探されるサービス、顧客が代わりに使っている方法から候補を探します。対象地域、用途、契約する顧客の規模も確認しましょう。
設備保守サービスなら、地域の保守会社だけでなく、メーカーの保守契約や、顧客自身による点検が比較対象になる場合があります。ただし、緊急修理と定期点検を同じ条件で比べると、必要な体制も料金もずれてしまいます。
この記事の仮定例では、対象を「地域の小規模な事業所が利用する、平日の定期保守契約」に絞ります。自社と、同じ用途で比較される競合A社を扱います。実際の分析でも、最初は顧客の比較理由を説明できる相手から調べ、必要に応じて広げます。
顧客が選ぶ条件から比較項目を決める
比較項目は、価格・品質・機能という大きな言葉から、顧客が確認する条件へ落とします。保守契約なら「対応がよい」を、受付時間、訪問できる地域、作業後の説明、報告書の内容などに分けられます。
| 比較項目 | そろえる条件 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 契約料金 | 対象設備・訪問回数・追加作業 | 料金表、見積条件 |
| 対応範囲 | 地域・受付時間・対応する設備 | 公式サイト、契約案内 |
| 説明・報告 | 説明する内容、報告書の項目と形式 | 公開見本、自社の記録 |
| 選ばれる理由 | どの顧客が、どの用途で評価したか | 自社の商談記録、顧客への聞き取り |
これは保守契約の分析用に作った項目例です。ソフトウェアなら連携機能や導入支援、店舗なら立地や利用場面など、顧客が判断する条件に置き換えます。項目を増やす前に、その違いが選択に影響するかを確認してください。
事実・解釈・未確認を分けて記録する
調査表には、情報の内容と一緒に出典、確認日、対象商品や契約条件を残します。「A社は夜間受付あり」は公開案内で確認する事実、「夜間対応を重視する顧客が移るかもしれない」はそこから考えた仮説です。
自社の強みは、経営者の評価だけで決めず、顧客が契約を続ける理由や、現場の担当者が把握する事情も合わせて考えます。サイトに書かれていないことを、競合が対応できない証拠にはしません。
J-Net21は、自社の強みを見つける方法として、顧客・取引先・従業員への聞き取りと競合比較を挙げています。また、商品やサービスのように外から分かりやすい強みと、内部の管理体制などの見えにくい強みを区別しています。
出典:J-Net21「SWOT分析をする上で自社の強みの見つけ方を教えてください。」(要約・2026年10月23日確認)
調べた情報と、そこから考えた仮説を分けると、追加で確かめることが見えてきます。顧客・競合・自社の情報が散らばっているときは、3C分析で整理してからSWOTへ進む方法もあります。
3C分析の競合分析とは?調査6項目・やり方と記入例顧客・競合・自社の比較材料を整理する方法を解説します。関連記事|マーケティングノート
競合比較をSWOTに整理する記入例
ここでは、定期保守サービスの比較結果を4要素に分けます。すべて説明用の仮定であり、実在企業の実績や市場全体の傾向を示すものではありません。

顧客の要望と自社・競合の条件を並べる
仮定する顧客は、複数の小規模事業所の設備を管理する担当者です。「現場で作業内容を説明してほしい」「各事業所の報告書をまとめて確認したい」という要望があるとします。
自社には、現場での説明と保守履歴の記録がある一方、日程調整は電話中心です。競合A社は、報告書をオンラインでまとめて確認できる機能を新たに案内したとします。この条件を、自社を主語にして整理すると次のようになります。
| SWOTの要素 | 記入する内容〈仮定〉 | 判断の理由・確かめる点 |
|---|---|---|
| 強み S | 保守履歴を踏まえて、現場で作業内容を説明できる | 説明への評価を、対象顧客の聞き取りで確認 |
| 弱み W | 電話での日程調整に担当者の手間がかかる | 自社の調整作業と、顧客が感じる負担を確認 |
| 機会 O | 複数拠点の報告をまとめて確認したい顧客がいる | 要望のある顧客の範囲と、契約意向を確認 |
| 脅威 T | A社が報告書のオンライン一括確認を提供し始めた | 公開された機能・対象契約と、顧客への影響を確認 |
この段階では、自社が全面的に優れているとも、A社の機能が契約の決め手になるとも言えません。自社の説明を評価する顧客が、報告書の確認にもどれほど困っているかを確かめることで、改善の方向が絞られます。
外部の変化と、自社の不足を一文に混ぜない
たとえば「競合のオンライン化に遅れている」と書くと、競合の変化と自社の状態が混ざります。「A社がオンライン機能を公開した」と「自社は電話調整が中心」を別々にすると、何が起き、何を変えられるかが明確になります。
同じ特徴が強みにも弱みにもなるときは、条件を添えます。現場での丁寧な説明は、設備の状態を理解したい顧客には価値があります。一方、説明時間を確保しにくい顧客には、短い報告で要点を確認できる方法が必要かもしれません。
特徴だけで評価せず、どの顧客の、どの困りごとに役立つかまで書くことが大切です。顧客の条件を変えれば評価も変わるため、異なる用途の意見を一つの欄にまとめないようにします。
分からない情報は、次に調べる課題として残す
競合の機能が公開されていても、利用率、顧客満足度、採算まで外から分かるとは限りません。「機能がある」と「その機能で顧客が増えた」は別の情報です。確認できない数値や社内事情を推測で補わないでください。
仮定例なら「自社の顧客はオンライン一括確認に料金を払うか」が未確認です。SWOTには要望を根拠付きで記載し、契約意向は追加の聞き取りや試行で確かめます。空欄があることより、根拠のない評価で施策を決めることが問題になります。
クロスSWOTで施策を選ぶ方法
4要素を整理したら、内部と外部の条件を組み合わせて施策を考えます。この方法をクロスSWOT分析と呼びます。出てきた案は、顧客への効果と実行できる体制を確認してから選びます。

4つの組み合わせから、対応の案を出す
強みを機会に生かす、強みで脅威に備える、弱みを補って機会を捉える、弱みと脅威が重なる部分の負担を抑える。この4方向で考えると、得意なことを伸ばす案と、先に備えるべきことを両方検討できます。
| 組み合わせ | 考える方向 | 設備保守サービスの施策例〈仮定〉 |
|---|---|---|
| 強み × 機会 SO | 得意な対応を、顧客の要望に生かす | 現場の説明を、複数拠点で使える共通の報告書にまとめる |
| 強み × 脅威 ST | 自社の価値が伝わる条件で比較してもらう | オンライン機能の有無に加え、説明内容と保守履歴の活用を見本で示す |
| 弱み × 機会 WO | 要望に応えるために、不足を補う | 複数拠点との調整を減らす、日程共有の方法を試す |
| 弱み × 脅威 WT | 対応できる範囲を定め、負担を抑える | 競合と同じ機能を一度に約束せず、提供できる範囲と時期を明示する |
中小機構は、クロスSWOTを、強み×機会、強み×脅威、弱み×機会、弱み×脅威の4つの組み合わせから戦略の方向を考える方法として紹介しています。
出典:中小機構「マンガでわかる『SWOT分析』」クロスSWOT分析(要約・2026年10月23日確認)
4方向すべてで施策を実行する必要はありません。また、WTに課題があるだけで事業撤退が決まるわけでもありません。契約上の責任や顧客への影響を含め、自社に必要な対応を個別に判断します。
顧客への効果・根拠・負担で優先順位を付ける
案を比べるときは、対象顧客の困りごとがどれほど軽くなるか、効果を見込む根拠があるか、費用や担当者の時間を確保できるかを見ます。重大な対応漏れなどがある場合は、その改善を先に扱います。
仮定例では、いきなり専用のオンラインシステムを作る前に、共通の報告書で要点を把握しやすくなるか試せます。既存の方法で要望を満たせるのか、日程共有の機能まで必要なのかを確かめてから、投資の範囲を決める考え方です。
競合と同じ機能を増やす前に、対象顧客の困りごとが解決するかを確かめましょう。違いを伝える方法については、競合との差別化を扱う記事でも解説しています。
競合と差別化する方法|競合優位性・4つの確認点顧客に選ばれる違いと、その伝え方を考えたい方に。関連記事|マーケティングノート
担当・期限・確認方法まで決めて試す
施策名だけで終わらせず、誰が、いつまでに、何を作り、どう評価するかを決めます。たとえば「営業担当が来月末までに報告書の見本を作り、複数拠点を持つ既存顧客3社に確認してもらう」と書けば、着手する作業が具体的になります。この人数と期限も説明用の仮定です。
確認する内容は、報告の要点を見つけられるか、追加の問い合わせが減るか、契約時に必要な条件が残っていないかなどです。少数の顧客の反応を市場全体の評価とせず、試した範囲と結果を残して、次の改善に使います。
JICAの企業向け解説では、競合の特定、商品・技術・価格・販売経路などの調査、自社との比較を経て、事業戦略を具体化する流れを示しています。情報収集と戦略の検討をつなげる考え方です。
出典:JICA「進出国における競合他社を分析する際のポイントとは?」(要約・2026年10月23日確認)
SWOT分析が役に立たないときの見直し方
SWOTは、情報を分類するだけで答えが出る方法ではありません。分析が施策につながらないときは、評価の根拠、顧客との関係、情報の時点を順に確かめます。

抽象的な評価を、顧客の条件と根拠へ戻す
「営業力が強い」「ブランドが弱い」といった表現だけでは、担当者ごとに意味が変わります。どの顧客から評価されたか、商談で何が理由になったか、比較した相手はどこかを書き足してください。
意見が分かれたときも、無理に一つへまとめる必要はありません。新規顧客は価格を重視し、既存顧客は説明や継続対応を評価している可能性があります。顧客の違いを確認し、根拠が足りない評価は仮説として残します。
条件が変わったら更新し、実行後の結果を反映する
前回のSWOTをそのまま使うと、競合の料金改定や自社の体制変更を見落とします。公開情報には確認日を付け、顧客の要望や比較される相手が変わったときに見直します。更新の間隔は、事業の変化の速さと判断の予定に合わせて決めます。
「SWOTは時代遅れなのか」という疑問に対しては、何に使うかを分けて考えるとよいでしょう。状況を整理して仮説を出す用途には使えますが、需要の大きさや施策の収益性、結果の因果関係は、4つの欄だけでは証明できません。
SWOTで出した案を試し、その結果で評価を更新するところまでを分析に含めます。設備保守の例でも、報告書の見本が役立たなければ、機能を増やす前に、顧客の困りごとを捉え直します。
競合分析とSWOTのよくある質問
調査の順序や情報の扱いに迷ったら、今回の分析で決めたいことに立ち戻ります。必要な比較と、追加で確かめることが分かる状態を目指しましょう。

3C分析とSWOT分析は、どちらを先に行いますか?
顧客・競合・自社の情報が整理されていない場合は、3C分析で比較材料をそろえてからSWOTに整理する方法があります。必要な情報がすでにあれば、SWOTから不足を見つけて調べてもかまいません。必ずすべての手法を順番に行う必要はありません。
競合の数や、4要素に書く項目数は決まっていますか?
一律の数に合わせる必要はありません。同じ顧客・用途で比較する相手を選び、判断に影響する項目を根拠付きで書きます。項目が多い場合は、顧客の選択への影響と実行上の重要性で絞ります。4つの欄を同じ件数にそろえるために、未確認の内容を加えないでください。
競合企業そのもののSWOTも作るべきですか?
競合の方針を考える補助として作る方法はあります。ただし、他社の人員配置、原価、顧客の満足度などは、公開情報だけでは分からない場合があります。誰を主語にした分析かを明示し、競合についての推測を自社のSWOTへ事実として持ち込まないようにします。
スターバックスやマクドナルドなどの企業事例を参考にできますか?
4要素の分け方を学ぶ参考にはできます。ただし、解説者の評価と企業が公表した事実は分けて読みます。自社の分析には、その企業の強みを写すのではなく、自社の顧客・商圏・提供条件に合う比較項目を使ってください。
比較検討している顧客へ、自社の違いを届けたい方へ
競合比較で伝える内容が決まったら、顧客との接点も検討します。ライバルマーケティング広告のページでは、競合サイトを訪れた比較検討層へ広告を届ける仕組みと活用場面をご案内しています。
ライバルマーケティング広告の仕組みを見る










