「広告費をかけて初回購入は取れるのに、2回目につながらない」「インフルエンサーに依頼したが、表現のどこまでが許されるのか判断できない」——化粧品マーケティングで最も多い2つの詰まりです。
結論からいうと、化粧品は初回獲得の単価で判断できません。2回目・3回目の継続率まで含めたLTVで設計しないと、獲得すればするほど赤字になります。そして表現は、薬機法とステマ規制の2つで線が引かれます。
この記事でわかること
- 化粧品マーケティングをLTVで設計する理由と計算方法
- 初回獲得の導線設計(何を入口にするか)
- 継続率を上げる打ち手
- SNS・口コミの活かし方と、媒体の選び方
- 薬機法とステマ規制で守るべき線引き

広告サービスを扱う競合サイトを指定し、訪問者を自社商品へ誘導。
サービス動画
まずは動画で全体像を確認できます
競合を調べているユーザーに、どう自社を選択肢として届けるのか
ライバルマーケティング広告の仕組みや、競合比較中のユーザーに接点を作る考え方を、サービス紹介動画でも確認できます。記事を読む前の全体把握にも、読み終えたあとの社内共有にも使いやすい内容です。
社内共有や後で見返す場合は、YouTubeで動画を開くこともできます。
【結論】化粧品は「初回単価」ではなくLTVで設計する

化粧品はリピート前提の商材です。初回購入だけを見て広告の良否を判断すると、ほぼ確実に判断を誤ります。
逆算の手順
- 1回あたりの粗利を出す
- 平均継続回数を実績から出す(想定ではなく実績)
- 粗利 × 継続回数=LTV
- LTV × 許容比率=初回獲得に使える上限
| 前提 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 1回粗利3,000円・平均4回継続 | 3,000 × 4 | LTV 12,000円 |
| 許容比率50% | 12,000 × 50% | 初回獲得の上限6,000円 |
| 継続が2回に落ちたら | 3,000 × 2 × 50% | 上限3,000円(半分) |
継続回数の前提が甘いと事故になる
「4回は続くはず」という想定でCPAの上限を決め、実際は2回だった——という状態が最も危険です。広告は目標CPA内で回っているのに、事業は赤字になります。継続回数は必ず実績から出し、四半期ごとに更新してください。
初回獲得の導線|何を入口にするか

| 入口 | 獲得単価 | 継続率 |
|---|---|---|
| 通常価格での本商品購入 | 高い | 高い |
| 初回割引つき定期 | 中 | 中(条件次第) |
| サンプル・トライアル | 低い | 低い |
入口を安くするほど獲得数は増えますが、継続率は下がります。どちらが有利かは、LTVで計算しないと判断できません。「CPAが安いからサンプル訴求」で始めて、継続率の低さで赤字になるのが典型的な失敗です。
定期の条件表示は特に注意
初回割引つき定期では、2回目以降の価格、継続回数の縛り、解約の方法と期限を分かりやすく表示してください。小さく書く、スクロールしないと見えない位置に置くといった表示は、景品表示法上の問題になり得ます。解約条件が分かりにくいことは、クレームと早期解約の両方を招きます。
継続率を上げる打ち手

広告の改善よりも、継続率の改善のほうが事業へのインパクトが大きい領域です。継続回数が4回から5回になれば、許容できる獲得単価が25%上がります。
効果が出やすい順
- 初回同梱物:使い方、効果を実感できる時期の目安、よくある質問
- 使い始めのフォロー:購入後3日・2週間・1か月のタイミングで連絡する
- 2回目到着前の連絡:解約を検討するタイミングに先回りする
- 使用量の案内:使いすぎ・使わなすぎを防ぐ
「効果が出る前にやめる」を防ぐ
化粧品の解約理由で多いのは「効果を感じない」ですが、その多くは実感できる時期より前にやめているケースです。購入時点で「変化を感じられる目安の時期」を伝えておくと、初期の離脱が減ります。ただし後述のとおり、効果の断定は避けてください。
SNS・口コミの活かし方と媒体選び

(ソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率・全年代)LINE:91.1%、Instagram:52.6%、X(旧Twitter):43.3%、Facebook:26.8%/(動画共有系)YouTube:80.8%、TikTok:33.2%
出典:総務省情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和7年6月27日公表)https://www.soumu.go.jp/main_content/001017160.pdf
全年代の利用率はLINEが91.1%、YouTubeが80.8%、Instagramが52.6%、Xが43.3%、TikTokが33.2%、Facebookが26.8%です。「化粧品ならInstagram」と決め打ちする前に、対象の年代を確認してください。
役割を分ける
- 認知:Instagram、TikTok、YouTube(使用感が伝わる映像)
- 比較:口コミサイト、比較記事、指名検索の受け皿
- 継続:LINE(利用率が突出しており、購入後の接点として最も届く)
口コミは「集める」より「返す」
レビューへの返信は、投稿者本人だけでなくそれを読んでいる比較検討中の人に向けたコミュニケーションです。とくに低評価への丁寧な返信は、購入前の不安を消す材料になります。
薬機法の線引き|効能効果の範囲を超えない

化粧品で表現できる効能効果の範囲は決まっています。「治る」「改善する」といった医薬品的な表現は、化粧品では使えません。
避けるべき表現の型
- 身体の変化を断定する:「シミが消える」「シワがなくなる」
- 医薬品的な効能:「治療」「改善」「アトピーに効く」
- 体験談で効果を保証する:「使ったら1週間でシミが消えました」
- 最上級表現:根拠と調査時点を示せない「No.1」「最高」
表現の責任は自社にある
インフルエンサーやアフィリエイターに依頼した投稿でも、逸脱した表現があれば広告主の責任として問われ得ます。依頼時のガイドラインに、使ってよい表現と禁止表現を具体例つきで明記してください。「常識の範囲で」という指示では防げません。
チェック体制を運用に組み込む
- 依頼時に表現ガイドラインを渡し、確認したことを記録に残す
- 公開前に原稿を確認する工程を入れる(可能な範囲で)
- 公開後も定期的に確認し、逸脱があれば修正を依頼する
競合で比較中の化粧品を探す人を狙い撃ちし、自社商品へ誘導。
ステルスマーケティング規制|責任を負うのは広告主

2023年10月1日から、広告であることを隠した表示は景品表示法上の不当表示になりました。
広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことがいわゆる「ステルスマーケティング」です。
出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing
化粧品はインフルエンサー起用が多い分野のため、この規制の影響が特に大きくなります。報酬や商品提供を受けた投稿は、広告であることが分かる表記が必要です。
「依頼していないから大丈夫」は通らない
規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません。
出典:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing
規制の対象は商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、投稿したインフルエンサーは対象になりません。つまり「本人が勝手に書いた」「表記を忘れたのは先方のミス」という説明では免責されません。
実務でやること
- 契約書・依頼書に、広告表記の文言と位置を明記する
- 商品提供のみ(報酬なし)の場合も表記が必要になり得るため、同様に扱う
- 投稿を確認し、記録を残す
- 表記が不十分な場合の修正依頼・提携解除の手順を決めておく
効果測定で見るべき指標
| 指標 | 見る理由 | 頻度 |
|---|---|---|
| 初回獲得単価 | 日々の運用指標。これ単体では判断しない | 週次 |
| 2回目継続率 | 最も重要。ここが落ちると全体が崩れる | 月次 |
| 平均継続回数 | LTVの前提。実績で更新する | 四半期 |
| チャネル別の継続率 | 獲得の質。安いチャネルほど低いことがある | 四半期 |
チャネル別の継続率を必ず分ける
獲得単価が最も安いチャネルの継続率が、最も低いというのはよくあります。初回単価だけで予算を寄せると、事業全体のLTVが下がります。四半期に一度は、チャネル別に継続率を集計してください。
比較検討層への接点が抜けやすい
化粧品は口コミサイトや比較記事で徹底的に比べられます。認知(SNS)と獲得(検索広告・リターゲティング)は手厚いのに、比較段階だけが空白という構成をよく見ます。
検索連動型広告は、インターネット広告媒体費に占める構成比38.7%(取引手法は運用型)。ディスプレイ広告は運用型が前年比111.5%、予約型が前年比98.8%。
出典:電通「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026年3月5日発表)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html
検索連動型広告はインターネット広告媒体費の38.7%を占める最大の枠ですが、対象は検索している人に限られます。競合ブランドのサイトや口コミページを見比べている段階の人には、検索広告もリターゲティングも届きません。
比較段階でやること
- 自社サイトに比較材料(成分の考え方、価格の根拠、解約条件、よくある不安)を置く
- 指名検索(「ブランド名+解約」「ブランド名+口コミ」)の受け皿を作る
- 競合を検討している層へ接点を作る
ライバルマーケティング広告では、指定した競合URLの訪問者を対象候補として配信を設計します。配信可否・対象母数は対象URLと商圏によって変わるため、事前診断で確認します。
よくある失敗と回避策
- 初回CPAだけで判断する:継続率が低いチャネルに予算が寄り、赤字になる
- 継続回数の前提が実績と乖離:目標CPA内なのに事業が赤字
- 安い入口に寄せすぎる:獲得数は増えるが継続しない
- 表現ガイドラインを渡していない:薬機法・ステマ規制の逸脱が起きる
- 解約条件の表示が不十分:クレームと早期解約を招く
最初に直すべきは2番
平均継続回数を実績から出し直すだけで、適正な獲得単価の上限が変わります。ここが古いまま運用していると、広告側がどれだけ頑張っても事業が改善しません。四半期ごとの更新を運用ルールにしてください。
化粧品販促の情報を探す層を競合で指定し、自社商品へ誘導。
化粧品マーケティングに関するよくある質問
獲得単価はいくらまで許容できますか?
LTVから逆算します。1回あたりの粗利 × 平均継続回数=LTV、その一定割合が初回獲得の上限です。継続回数は想定ではなく実績から出し、四半期ごとに更新してください。ここが古いと、目標CPA内でも事業は赤字になります。
サンプルやトライアルを入口にすべきですか?
獲得数は増えますが継続率は下がります。どちらが有利かはLTVで計算しないと判断できません。「CPAが安いから」という理由だけで安い入口に寄せると、獲得すればするほど赤字になることがあります。
継続率を上げるには何が効きますか?
初回同梱物(使い方・実感の目安時期・FAQ)と、使い始めのフォロー連絡です。解約理由で多い「効果を感じない」の多くは、実感できる時期より前にやめているケースです。目安を先に伝えるだけで初期離脱が減ります。
インフルエンサーの投稿で表現が問題になったら誰の責任ですか?
広告主です。ステルスマーケティング規制の対象は商品・サービスを供給する事業者であり、投稿した本人は対象になりません。「先方のミス」では免責されないため、依頼時に表現ガイドラインを渡し、確認記録を残してください。
化粧品で使ってはいけない表現は?
「治る」「改善する」といった医薬品的な効能、身体の変化を断定する表現、体験談で効果を保証する表現、根拠を示せない最上級表現です。化粧品で表現できる効能効果の範囲を超えないことが原則で、これはインフルエンサーの投稿にも同じく適用されます。
比較されると負けてしまいます
比較材料が自社サイトにあるかを確認してください。成分の考え方、価格の根拠、解約条件、よくある不安への回答です。そのうえで、競合ブランドを見比べている段階の相手に届く接点があるかを見てください。認知と獲得だけでは、この層は取りこぼします。





