SaaSの競合分析では、同じ業務を担う顧客を想定し、必要な機能が使えるプランと、実際の利用条件での料金を比べます。その違いを、顧客が自社を選ぶ理由や、営業で補うべき説明につなげます。
SaaSは、インターネット経由でソフトウェアを利用する提供形態です。同じサービスでも、契約プラン、利用人数、データ量によって使える範囲や費用が変わるため、機能一覧と月額の表示だけでは比較しきれません。
参考:AWS|SaaSとは(提供形態の説明を参照/2026年10月21日確認)
この記事では、SaaSを提供する企業のマーケティング・営業担当者に向けて、競合の選び方と調べる項目を解説します。問い合わせ管理サービスの仮定例を使い、比較表から提案やサイトの説明を見直すところまで考えます。
この記事でわかること
- 顧客の業務と利用条件から競合を選ぶ方法
- 機能・プランの制約と料金を比べるときの確認点
- 分析した違いを営業資料・料金ページ・デモに生かす方法
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顧客の業務から競合を選ぶ
最初に、今回の顧客が改善したい業務を決めます。その業務で実際に候補になるサービスや、今の仕事の進め方を並べましょう。

同じ業務の選択肢を並べる
問い合わせ管理なら、受付、担当者への割り当て、回答履歴の確認、管理者による集計まで、どこを改善したいのかを決めます。「顧客管理」という商品名が同じでも、営業案件の管理が中心のサービスと、サポート対応が中心のサービスでは比較する機能が変わります。
たとえば、20人のサポート部門が「担当者が変わるたびに過去の回答を探し直している」と困っている場面を仮定します。この顧客なら、問い合わせ件数を数える機能だけでなく、顧客ごとの対応履歴を引き継げるかが重要です。
表計算と現状維持も比べる
別のSaaSだけでなく、メールと表計算で続ける、既存システムを改修する、外部へ業務を委託する方法も候補になります。導入を見送る場合に、どの作業や費用が残るかも確かめます。
現状維持を選ぶ理由が、データ移行の負担や社内教育への不安なら、新機能を増やすだけでは提案が進まないかもしれません。乗り換える際に必要な作業と、引き継げるデータを説明する方が、判断を助ける場合があります。
人数と利用部門をそろえる
利用する業種・部門、人数、処理する件数、既存システム、管理上の要件を書き出します。少人数の一部門で使う場合と、複数部門を横断して使う場合では、必要な権限設定や支援が異なります。
ここで決めた条件は、後の機能比較と料金計算にも使います。比較表の途中で人数や対象業務を変えると、どの違いが判断に影響したのか分からなくなるためです。
機能は実際の使い方で比べる
機能名に丸が付くかに加え、顧客の作業をどこまで進められるかを確かめます。提供範囲、対象プラン、利用上限、顧客側で必要な設定を一緒に記録します。

一連の操作が完了するかを見る
仮定例の問い合わせ管理なら、問い合わせを受け付けてから、担当を決め、過去の回答を探し、対応を引き継ぐところまで確認します。「履歴管理あり」という表記だけで、顧客が必要とする引き継ぎ方まで実現できるとは判断しません。
公式の機能説明やヘルプで分かる範囲を調べ、足りない点はデモや試用で確認する項目に残します。試用する場合は、利用条件を確かめ、実際の顧客情報を持ち込まずに確認できるサンプルを用意しましょう。
対象プランと利用上限を確かめる
機能がサービス全体にあるかと、比較中のプランで使えるかは別です。保存件数、容量、設定できる数、連携回数など、顧客の利用規模に関わる制限を確かめます。
たとえばkintoneの公式料金表では、業務用に作成する「アプリ」の数に上限があり、ライトコースは200個、スタンダードコースは1,000個です。同じ製品でも、契約コースによって使える範囲は変わります。
出典元:サイボウズ|kintoneの料金 / kintoneヘルプ|アプリとは(要約/2026年10月21日確認。特定製品の導入を推奨する比較ではありません)
上限が多い方を一律に高く評価する必要はありません。今回の顧客が必要とする量を満たすか、増えた場合に追加費用やプラン変更が必要かを判断します。
連携・権限・移行を確認する
ソフトウェアの機能やデータを別のシステムから利用するための仕組みが、APIです。APIで連携できると案内されていても、接続先、対象プラン、回数制限、設定や開発の担当まで確認しないと、必要な連携を実現できるかは分かりません。
参考:AWS|APIとは(APIの定義を参照/2026年10月21日確認)
問い合わせ管理なら、顧客台帳との連携に加え、誰が回答履歴を見られるか、以前の履歴を取り込めるか、移行時に添付ファイルも引き継げるかが確認点になります。サイトに説明が見つからない項目は、対応不可とせず「未確認」と残します。
料金を同じ利用条件に直す
価格は、機能の比較で必要と判断したプランを使って計算します。人数、使用量、契約期間、税の扱いをそろえ、表示されている最小額から今回の顧客の支払額へ直します。

課金単位と契約期間をそろえる
利用者一人ごとの料金、組織ごとの料金、処理件数に応じた料金では、同じ月額表示でも意味が変わります。最低契約人数、基本料金に含まれる範囲、超過分の単価を読みます。
参考:Stripe|SaaS料金体系モデルの基礎知識(ユーザーごと・使用量・定額などの料金モデルの説明を参照/2026年10月21日確認)
年契約の金額を12で割った月額相当と、1か月単位で契約するサービスの月額は、契約条件を分けて比べます。月払いでも契約期間が1年の場合があるため、支払い時期、契約期間、自動更新、解約の締め切りを確認しましょう。
20人で使う場合の料金を比べる
問い合わせ管理を20人で使う場合として、次の架空の料金を比べます。計算の説明用であり、実在するサービスの価格や相場、DSSのサービス料金ではありません。両方とも月払い・税抜で、人数以外の超過料金は発生しない条件とします。
| 比較する条件 | 架空のサービスA | 架空のサービスB |
|---|---|---|
| 基本の料金 | 1人あたり月1,000円 | 月15,000円に10人分を含む |
| 追加人数 | 利用人数分を課金 | 11人目から1人あたり月1,000円 |
| 20人の計算 | 1,000円×20人 | 15,000円+1,000円×10人 |
| 月額合計 | 20,000円(税抜) | 25,000円(税抜) |
| 別途確認する費用 | 導入支援・データ移行・連携 | 導入支援・データ移行・連携 |
この条件ではAの利用料金が低くなります。ただし、必要な引き継ぎ機能やデータ移行まで同じ条件で使えるかは、別に確認する必要があります。料金差と、顧客の業務が実現できるかを分けて判断してください。
競合分析テンプレートを無料配布|比較表の項目・Excel記入例比較表・出典記録・施策記録を残せるExcelと、記入例を確認できます。関連記事|マーケティングノート
導入時と終了時の費用も確かめる
利用料以外に、初期設定、データ整理、移行支援、連携の開発、担当者への教育に必要な費用や作業を確認します。有償の支援と、顧客側で行う作業を分けると、契約後の負担を見通しやすくなります。
契約を終える場合に、どの形式でデータを取り出せるか、添付ファイルや履歴も対象か、取り出しに費用や期限があるかも確認します。契約前に答えられない点は、推測の金額を入れず、確認先と質問を残しましょう。
違いを営業と集客に反映する
比較表で確かめた違いは、顧客の仕事にどう関わるかまで説明して使います。対象に合う案件を見つけ、営業資料、比較ページ、デモで同じ提供条件を伝えましょう。

顧客の発言で比較軸を見直す
商談では、実際に検討した相手、利用人数、必要だった作業、選んだ理由、見送った理由を確かめます。公開情報で調べた事実、顧客が話した内容、営業担当者の解釈は、記録する欄を分けます。
「連携が足りない」と言われたら、何と、どの情報を、どの頻度でやり取りしたかったのかを聞きます。一人の感想や一件の失注から、競合全体の強さや自社の開発優先順位を決めないようにします。
選ばれる条件を一文にする
顧客が重視し、自社が実際に提供できる違いから、誰のどの作業に向くかをまとめます。これが、競合と比べたときの自社の位置づけ、ポジショニングを考える出発点です。
仮定例で、自社が顧客単位に回答履歴を整理できるなら、「担当交代時にも過去の回答を確認しながら対応したいサポート部門向け」と説明できます。操作手順や対応範囲で確かめられる内容にし、根拠のない時間短縮率へ言い換えません。
競合と差別化する方法|競合優位性・4つの確認点顧客が選ぶ条件から、自社の違いを見つけて確かめる方法を解説しています。関連記事|マーケティングノート
比較ページとデモをつなぐ
サイトでは、顧客が確かめたい業務、対象プラン、費用が増える条件、導入の準備を説明します。競合の見出しや広告文をまねる前に、自社の説明で不足している判断材料を探してください。
「担当交代時の回答履歴を確認できる」と広告で伝えるなら、リンク先でも引き継ぎの画面や手順を示し、必要に応じてデモで確かめられるようにします。広告とデモで対象プランが違う場合は、その条件が分かる案内が必要です。
確認日を残して更新する
比較表には、出典URL、対象プラン、確認日を残します。更新する担当者と、営業や開発などの共有先も決めておきましょう。
料金や利用上限の変更を見つけたら、その情報を使う営業資料やページも確認し、古い条件で説明し続けることを防ぎます。
機能差が見つかったら、顧客のどの仕事に影響するかを確かめてから、説明や製品を見直します。商談で残った疑問や見送り理由を読み、問い合わせや受注の一度の増減だけで分析の成果を断定しないようにしましょう。
SaaS競合分析でよくある疑問
調べる社数や使うツールは、今回の判断に必要な範囲から選びます。公開情報で分かることと、商談や試用で確かめることを分けましょう。

競合は何社まで調べればよい?
最初は、商談でよく比較される相手や、条件の違う選択肢を代表する少数から始めます。一律の社数を満たすことより、顧客が検討する方法を見落としていないかが大切です。自社も同じ項目で記入し、比較すべき選択肢が抜けている場合に対象を追加します。
無料ツールだけで調査できる?
公式の機能ページ、料金表、ヘルプ、公開事例を読み、表計算で比較表を作るところから始められます。アクセスや検索語を調べる専用ツールは、必要な情報と確認できる範囲を確かめて選びます。ツールを使っても、非公開の契約条件や顧客の判断理由をすべて取得できるわけではありません。
競合調査ツールおすすめ15選|無料の範囲・目的別の選び方【2026年】知りたい情報ごとに、競合調査ツールの用途と無料で使える範囲を確認できます。関連記事|マーケティングノート
競合の解約率は分かる?
外部から公式サイトを見ただけでは、非公開の解約率や受注率は分かりません。解約率が公表されている場合も、顧客数と売上のどちらを基にした率か、対象期間、対象事業、集計方法を確認します。アクセス数やレビューの件数を、解約率の代わりに使わないようにします。
新機能はすぐ自社にも追加する?
まず、自社の対象顧客がその機能を必要としているか、既存機能や運用で対応できるかを確かめます。対応を見送った理由、必要な顧客の条件、追加で確認することを残し、他社の発表だけで開発の優先順位を変えないようにします。
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