社会保険労務士(社労士)の競合分析は、同じ企業層に、どの業務を、どの条件で提供しているかをそろえて比べるところから始めます。近隣の事務所を顧問料の順に並べるだけでは、相談だけの契約と、手続代行・給与計算まで含む契約を混同してしまいます。
例えば、給与計算を頼みたい会社が知りたいのは、月額だけではありません。勤怠をいつまでに渡すか、誰が確認するか、入退社や賞与がある月に何が増えるかも、依頼先を選ぶ条件になります。
この記事では、法人向けの社労士事務所を主な対象に、比較相手の選び方、顧問範囲と運用、年間費用、案内の改善までを説明します。個人向けの障害年金相談などは、企業の顧問契約と分けて調べます。
この記事でわかること
- 企業規模と依頼業務から競合を絞る方法
- 相談顧問・手続代行・給与計算を比較する項目
- 同じ条件で年間費用を比べ、自事務所の案内へ反映する手順
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社労士の競合は、同じ顧問業務を求める企業から選ぶ
比較する単位は「同じ地域の社労士」から、もう一段具体的にします。企業が頼みたい業務と、従業員の構成、相談の仕方をそろえると、実際に比較される事務所を見つけやすくなります。

法人顧問と個人の年金相談を分ける
企業の労務相談を継続して受ける顧問契約と、個人の年金請求を支援する契約では、相談者も依頼の流れも違います。両方を扱う事務所でも、競合分析では対象業務ごとにページと料金を分けて記録します。
連合会の公式FAQは、企業向けに社会保険手続き・就業規則・給与計算等を、個人向けに年金相談や請求支援等を挙げています。依頼分野、対応範囲、料金、説明の分かりやすさを確認するよう案内しています。
法人顧問を増やしたいなら、まず自事務所が受けたい相談を一つ書きます。「採用が増え、給与計算と入退社手続きを外部へ任せたい会社」まで具体化すれば、調べる業務も明確になります。
従業員数に加え、雇用形態と拠点数をそろえる
従業員20人という人数が同じでも、固定勤務中心の会社と、複数店舗でパートのシフトが変わる会社では、勤怠の集め方や確認の負担が異なります。業種、人数、正社員・パート等の構成、拠点数、給与の締め日を比較条件へ入れます。
地域についても、訪問を希望する会社なのか、オンラインで完結したい会社なのかを区別します。遠方の事務所でも同じ企業層を受けていれば、比較候補に入ります。
他事務所と、自社処理・ソフト利用の違いを整理する
検索結果の事務所、経営者が紹介された事務所、業界に詳しい事務所を候補にします。検索順位は発見経路の一つであり、対応力の順位ではありません。
企業が「社内担当者と給与ソフトで続ける」ことを検討しているなら、その選択も別欄へ置きます。ソフトの機能と、社労士が引き受ける確認・相談・手続きは役割が違うため、すべてを同じサービスとして価格比較しないようにします。
比較相手は、同じ企業が同じ業務を頼むときに検討する候補から選びます。
3C分析の競合分析とは?調査6項目・やり方と記入例顧客・競合・自社の関係から、調査すべき項目を整理する。関連記事|DSSお役立ちコラム
顧問範囲と月次の進め方を、作業ごとに比較する
「顧問契約」という名称だけでは、含まれる作業は分かりません。相談、手続代行、給与計算を分け、企業と事務所の間で誰が何をするかを確認します。

相談顧問・手続代行・給与計算を別々の欄にする
相談顧問は、日々の労務相談や制度変更の相談など、契約で定めた支援を継続して受けるものです。そこへ手続代行や給与計算が含まれるかは、業務案内と見積もりで確認します。
| 比較項目 | 確認する内容 | 別に確認する作業 |
|---|---|---|
| 労務相談 | 相談対象、連絡方法、面談 | 規程の新規作成・制度設計 |
| 手続代行 | 入退社や給付等の対象手続き | 年度更新・算定の扱い |
| 給与計算 | 対象人数、勤怠の形式、納品物 | 賞与、修正、初期設定 |
| 規則・助成金 | 対応する業務と契約条件 | 新規・改訂、申請ごとの報酬 |
表の右欄は、一律に別料金という意味ではありません。顧問契約へ含むのか、別の見積もりになるのかを確認する欄です。サイトに書かれていなければ「未確認」と残し、対応不可と決めつけません。
連合会の業務案内には、入退社等の手続き、労働保険の年度更新、社会保険の算定、月次・賞与の給与計算、勤怠管理などが挙げられています。これらが各事務所の一つの契約にすべて含まれるという説明ではありません。
勤怠の確定から給与の確認まで、受け渡しを追う
給与計算では、勤怠を誰が確定し、どの形式で、いつ渡すのかを確認します。その後の事務所による計算、企業への確認依頼、修正、最終データの受け渡しまで、一連の流れで比べます。
「クラウド対応」だけでは、企業側の入力や確認がどれだけ残るかは分かりません。利用ソフト、データの受け渡し、承認する担当者、締切後に変更が出た場合の連絡方法を調べると、運用の違いが見えてきます。
就業規則の相談と、作成・改訂の依頼を区別する
規則について質問できることと、規則一式を新規作成してもらえることは同じではありません。現行規則の確認、改訂案の作成、説明会、運用開始後の相談など、どこまで頼むかをそろえます。
連合会は、就業規則や各種規程の作成・改訂・運用、人事・賃金制度の設計と運用、法改正への対応支援などを、労務管理の相談指導業務として案内しています。
助成金も、対象業務、要件確認、資料準備、申請支援、報酬の発生条件を別に確認します。支援実績の件数だけでは、個別企業の支給可否は分かりません。
窓口・確認者・不在時の引き継ぎを見る
代表が相談を受けるのか、担当社労士と事務担当が分担するのか、最終確認者は誰かを整理します。担当人数の多さや代表との距離だけで、良し悪しは決まりません。
質問の受付、回答までの見通し、急ぎの場合の連絡、不在時の引き継ぎを確認します。対応時間外の受付と、実際に回答する時間も分けて記録しましょう。
顧問料と給与計算をそろえ、年間費用を比べる
業務の違いが分かったら、同じ条件で費用を集計します。月額の顧問料に、給与計算、初期設定、年に一度の業務などを加え、比較する期間をそろえます。

人数・含む業務・追加料金の条件を先に書く
費用表には、従業員数の数え方、給与計算の対象人数、入退社の件数、賞与の回数、相談の範囲を付記します。税込・税別も統一します。
初年度だけ発生する設定料と、毎年かかる費用は分けます。年度更新・算定が顧問料に含まれるか、給与の再計算や人数の増加で費用が変わるかを確認すれば、低い月額だけに引っ張られずに済みます。
社会保険労務士法施行規則第12条の10は、受任前に、報酬額の算定方法その他の報酬基準を示すことを定めています。比較するときも、金額とその算定条件を一緒に確認します。
同じ20人分の顧問・給与業務を頼む架空例
比較方法を説明するための架空例です。同じ20人の会社が、同じ範囲の労務相談・手続代行・月次給与計算を12か月依頼し、この例では初期費用や年次の追加費用がないと仮定します。金額は税込で、相場や実在事務所の料金ではありません。
| 費用の内訳 | 架空のA事務所 | 架空のB事務所 |
|---|---|---|
| 月額顧問料 | 2万2,000円 | 3万8,500円 |
| 月次給与計算 | 月2万2,000円 | 顧問料に含む |
| 月額の合計 | 4万4,000円 | 3万8,500円 |
| 12か月の合計 | 52万8,000円 | 46万2,000円 |
顧問料だけならAが低く見えますが、給与計算を含めた年間費用ではBが6万6,000円低くなります。実際には、対象業務や追加費用が異なる場合、その差を補ってから比べる必要があります。
月額の安さより、必要な業務を同じ条件で頼んだ年間費用を見ます。
低価格の理由と、企業側に残る作業を確かめる
企業が勤怠を整え、指定形式でデータを渡すことで、事務所の処理負担が減る契約も考えられます。安いから品質が低い、高いから相談しやすいと決めず、役割と作業量を確かめます。
料金差を埋める価値があるかは、その企業の課題次第です。給与計算を社内で続けたい会社には相談範囲が、担当者の負担を減らしたい会社には受け渡しの簡単さが、判断材料になります。
競合分析テンプレートを無料配布|比較表の項目・Excel記入例資料の出典・確認日・未確認欄を備えた比較表の作り方を見る。関連記事|DSSお役立ちコラム
社労士事務所を比較中の企業へ、対応範囲を伝える
顧問範囲・料金の条件・相談窓口を整えたら、比較検討中の企業との接点づくりに向けて、広告の仕組みをご確認いただけます。
ライバルマーケティング広告の詳細はこちら比較結果を、自事務所の案内と受入体制へ反映する
比較表が埋まったら、競合の長所をそのまま取り入れる前に、自事務所で説明や運用が不足している箇所を探します。問い合わせを増やす準備と、受任後に対応できる準備を合わせて進めます。

出典・確認日を付け、未確認は空欄で残す
業務案内、料金表、事務所概要、公式会員リストなど、どこで確かめたかを残します。公開情報で分からない担当体制や受任余力まで、印象で埋めないようにします。
連合会の相談案内は、都道府県の社労士会と会員リストを案内しています。リストは随時更新される一方、最新情報ではない場合もあると明記されています。
出典・要約:全国社会保険労務士会連合会「社労士に相談する」
掲載されている情報と、現在の受入状況は別です。登録や所在地を確かめる資料と、サービス範囲・料金を確かめる資料を区別します。
企業が判断できない説明から直す
例えば「給与計算対応」とだけ書いているなら、対象、勤怠の受け渡し、納品物、追加になる作業を補います。「迅速に対応」なら、連絡手段や通常の受付時間を具体化します。
| 見つかった課題 | 直す案内 | 所内で合わせること |
|---|---|---|
| 顧問の範囲が不明 | 含む業務と別契約を説明 | 契約書・見積もりとの一致 |
| 給与の流れが不明 | 資料・締切・確認を示す | 受渡し方法と担当の分担 |
| 相談窓口が不明 | 連絡方法と受付時間を案内 | 回答者と不在時の引継ぎ |
| 追加費用が不明 | 人数・作業等の変動条件 | 事前説明と見積もり手順 |
事務所の強みは、相手が必要としていることと、自分たちが実行できることが重なる場所にあります。比較表の空欄を埋めるために、受けられない業務まで広げる必要はありません。
広告の表現を、確認できる範囲へ合わせる
他事務所に書いてある表現が、そのまま使えるとは限りません。「助成金が必ず受け取れる」「地域で最も安い」といった表示は、裏付けや条件を確認せずに採用しないようにします。
施行規則第12条の11は、業務内容や報酬等に関する不実の説明や、不当に誤認させる広告を禁じています。先ほどの厚生労働省の掲載規則と、所属会の現行ルールを確認し、自事務所の対応範囲と一致する案内に整えます。
相談の適合と、受任後の負担を振り返る
案内を直した後は、増えた問い合わせが希望する業種・規模・業務に合っているか、面談で範囲や料金の行き違いが減ったかを確認します。閲覧数だけでは判断できません。
受任後には、資料の遅れ、再計算、相談対応の時間も振り返ります。相談を多く集めるだけでなく、約束した範囲を継続して提供できる状態へ整えることが、競合分析の活かし方です。
社労士の競合分析でよくある疑問
比較件数、給与計算ソフト、特化分野、実績表示について、判断の基準を整理します。まず対象企業と頼む業務を合わせ、分からない条件を明確にしていきましょう。

競合の社労士事務所は何件調べればよいですか?
件数だけで決めず、同じ企業層が同じ業務を頼む候補を集めます。地域、企業規模、顧問範囲、相談方法をそろえ、比較条件が大きく異なる事務所は別に整理します。
給与計算ソフトも競合に入りますか?
企業が社内処理を選ぶ際の代替手段として別欄に整理します。ソフトの機能と、社労士が引き受ける確認・相談・手続きは役割が違うため、同じ一式のサービスとは扱いません。
競合が少ない分野へ特化すべきですか?
競合数だけでは決められません。対象企業の相談需要、自事務所の経験、対応できる業務量と体制を確かめます。法人顧問と個人の年金相談のように、依頼者と契約が異なる分野は分けて検討します。
口コミや助成金の実績はどう比較しますか?
依頼者が何を評価したか、実績の業務・対象・期間・集計条件を確認します。点数や件数だけで対応力や個別案件の結果を判断せず、公開情報で分からない点は未確認として残します。











