「時間をかけてペルソナを作ったのに、誰も見ていない」「カスタマージャーニーマップを壁に貼ったが、施策は何も変わらなかった」——そんな徒労を経験していませんか。
先に結論です。ペルソナが使われない原因は、作り込みが足りないことではなく「判断に使える情報が入っていない」ことです。年齢・年収・趣味・休日の過ごし方を細かく書いても、広告の訴求もLPの構成も決まりません。必要なのは、その人が何を基準に選び、何を理由に断るかです。
この記事では、使われるペルソナの条件から、調査の進め方、ジャーニーの描き方、施策への落とし込み、更新の運用までを実務手順として整理します。
この記事でわかること
- 使われるペルソナと使われないペルソナの違い
- 定量・定性・営業・検索の4方向からのデータ収集
- 状況・課題・判断軸・障壁の4項目で書く方法
- 段階・行動・感情・接点で描くジャーニーマップ
- 接点ごとに担当と指標を割り当てる落とし込み
- 半年ごとの見直しで陳腐化を防ぐ運用
【結論】使えるペルソナの4条件

ペルソナが施策に使われるかどうかは、次の4条件を満たしているかで決まります。
| 条件 | 内容 | 欠けたときに起きること |
|---|---|---|
| 事実に基づく | 調査データが出典として存在する | 社内の思い込みが固定化される |
| 判断軸がある | 何を基準に選ぶかが書かれている | 訴求もLP構成も決められない |
| 接点とつながる | どのチャネルで会えるかが分かる | 施策に翻訳できず資料で終わる |
| 更新される | 見直しの周期が決まっている | 数年前の想定のまま運用される |
最も重要なのは判断軸です。「価格と品質のどちらを優先するか」「導入までの期間と機能の多さのどちらを重視するか」といった選択の基準が書かれていれば、その瞬間から訴求の優先順位が決まります。
設計を進める段階で、比較検討層への打ち手も把握しておくと、後の施策設計が楽になります。
使われないペルソナの共通点

共通点1:想像で作っている
社内会議だけで「こういう人だろう」と決めたペルソナは、担当者個人の経験に引きずられます。出典のない属性は書かないでください。
共通点2:細かく作り込みすぎている
名前、顔写真、家族構成、愛読誌、休日の過ごし方まで書いたペルソナをよく見ますが、そのほとんどは施策に影響しません。趣味の情報が広告文を変えるケースは稀です。
共通点3:人数が多すぎる
5人も6人もペルソナを作ると、どれに向けて作ればいいか分からなくなり、結局どれも使われません。初期は1人に絞ってください。
共通点4:更新されていない
市場も競合も顧客も変わるため、数年前のペルソナは現実とずれます。更新の周期が決まっていないペルソナは、必ず陳腐化します。
データの集め方

ペルソナの材料は、4方向から集めます。この中で最も費用対効果が高いのは、既存顧客へのインタビューです。
| 方向 | 方法 | 分かること |
|---|---|---|
| 定量 | アクセス解析、CRM、購買データ | 属性の分布と傾向 |
| 定性 | 既存顧客5〜10名へのインタビュー | 選んだ理由、迷った点、使った言葉 |
| 営業 | 商談記録、失注理由の集計 | 断られる理由、競合の名前 |
| 検索 | 検索語句レポート、サジェスト | どんな言葉で探しているか |
インタビューでは「なぜ弊社を選んだか」だけでなく、「どこと比較したか」「何が決め手だったか」「逆に不安だった点は何か」を必ず聞いてください。失注案件の担当者にも聞ければ、障壁の把握が一段深くなります。
ペルソナの書き方

書く項目は4つに絞ります。
| 項目 | 書く内容 | 悪い例 | 良い例 |
|---|---|---|---|
| 状況 | 置かれている環境と制約 | 35歳・課長 | 年商20億の製造業で、情シス兼任の総務課長。使える予算は年間300万円 |
| 課題 | 具体的に困っていること | 業務効率化したい | 月次の在庫棚卸に3人×2日かかっている |
| 判断軸 | 何を基準に選ぶか | コスパ重視 | 初期費用より、現場が使いこなせるかを優先する |
| 障壁 | 断る理由になるもの | 特になし | 既存システムとの連携可否が不明だと稟議に出せない |
障壁まで書けて初めて、ペルソナは使える状態になります。断る理由が分かれば、LPで先回りして潰すべき論点が決まるためです。
カスタマージャーニーの描き方

ジャーニーは、段階ごとに「行動・感情・接点」を並べます。
| 段階 | 行動 | 感情 | 接点 |
|---|---|---|---|
| 認知 | 課題を自覚する、検索し始める | 不安・焦り | 検索、SNS、記事 |
| 情報収集 | 複数社のサイトを見る | 期待・混乱 | 自社サイト、比較記事 |
| 比較 | 候補を絞る、社内で相談する | 迷い・不安 | 事例、価格ページ、競合サイト |
| 決定 | 問い合わせ、稟議、契約 | 期待・緊張 | 商談、提案資料 |
描くうえでの要点は感情の変化を必ず入れることです。感情が落ち込む場所——「情報が多すぎて分からなくなる」「社内を説得できる材料がない」——が、打ち手を置くべき箇所になります。
施策への落とし込み

ジャーニーを描いただけでは何も変わりません。接点ごとに「施策・担当・指標」を割り当ててください。
第一に、各接点に対応する施策を置きます。第二に、優先順位を決めます。ファネルの通過率が最も落ちている段階から着手するのが定石です。第三に、担当者を決めます。第四に、その施策を何で測るかを決めます。
担当と指標が空欄の施策は実行されません。ここまで埋めて、ジャーニーマップは初めて実務のツールになります。
更新と運用

ペルソナとジャーニーは、作った瞬間から古くなります。半年に一度の見直しを運用として固定してください。
加えて、次のような変化が起きたときは周期を待たずに更新します。競合に新規参入があったとき、失注理由の傾向が変わったとき、主要な流入チャネルが変化したとき、商品やサービスの提供内容が変わったときです。
更新時には、何がどう変わったかを差分として記録してください。変更履歴が残っていると、「なぜこの想定になっているか」を後から追えます。また、保存場所は全員がアクセスできる場所にしてください。担当者のローカルにあるペルソナは、必ず使われなくなります。
効果測定の設計

ジャーニーを設計したら、段階ごとの通過率を測ります。通過率が最も落ちている段階が、次の打ち手の場所です。
| 段階 | 見る指標 | 落ちている場合の示唆 |
|---|---|---|
| 認知 | 表示回数、流入数 | そもそも届いていない |
| 情報収集 | 回遊率、滞在時間 | 知りたい情報が見つからない |
| 比較 | 事例・価格ページ到達率 | 比較材料が不足している |
| 決定 | CVR、商談化率 | 障壁を潰せていない |
あわせて、ペルソナの仮説が当たっていたかを検証してください。想定した判断軸が実際の受注理由と一致していたか、想定した障壁が実際の失注理由と一致していたかを突き合わせます。
検証の結果、比較段階で競合に流れていると分かった場合は、その段階に届く手段が必要になります。
比較段階への打ち手

ジャーニーを描くと、多くの企業で「比較」段階の打ち手が手薄になっていることが分かります。
認知段階にはコンテンツと広告があり、決定段階には商談と提案資料があります。しかしその中間——ユーザーが競合と自社を並べて検討している時間——に対して打てる手が、事例ページの追加くらいしかない、という状態が典型です。
この段階のユーザーは自社サイトを離れて競合のサイトを見ているため、自社の接点の外側におり、通常の手段では捕捉できません。
ライバルマーケティング広告は、競合を調べている段階のユーザーに自社を選択肢として提示する手法です。次の条件に複数当てはまるなら、検討する価値があります。
- ジャーニー上で比較段階の打ち手が不足している
- 競合と比較されやすい商材である
- 失注理由に競合他社の名前が頻繁に出てくる
- 比較材料(事例・価格・違い)は用意できている
まとめ
ペルソナとカスタマージャーニーは、作ること自体が目的になると必ず形骸化します。判断に使える情報が入っているかどうかが、すべての分かれ目です。
既存顧客へのインタビューを軸に事実を集め、状況・課題・判断軸・障壁の4項目で1人だけ書きます。ジャーニーには感情の変化を入れ、落ち込む場所に打ち手を置きます。接点ごとに担当と指標を割り当て、半年ごとに見直します。検証では、想定した判断軸と障壁が実際の受注・失注理由と一致していたかを確認してください。
そのうえで、比較段階の打ち手が不足していると分かった場合は、接触手段の追加を検討してください。
ペルソナとカスタマージャーニーに関するよくある質問

Q. ペルソナは何人作るべきですか?
初期は1人に絞ってください。複数作ると、どのペルソナに向けて施策を作るのか判断できなくなり、結果としてどれも使われません。1人のペルソナで施策を回し、成果が安定してから2人目を追加する進め方が確実です。既存顧客の中で最も受注しやすく、かつ利益率の高い層から選んでください。
Q. 作成にはどのくらい時間がかかりますか?
既存顧客5〜10名へのインタビューを含めて2週間程度が目安です。ただし完成度を上げようとして時間をかけすぎないでください。この種の資料は使いながら精度を上げるものです。粗くても2週間で作って施策を回し、実際の受注・失注データで補正していくほうが、3か月かけて完璧を目指すより早く成果に近づきます。
Q. インタビューでは何を聞けばよいですか?
「なぜ弊社を選んだか」に加えて、「どこと比較したか」「何が決め手だったか」「不安だった点は何か」を必ず聞いてください。特に比較先と不安点は、ペルソナの判断軸と障壁の欄に直結します。可能であれば失注した相手にも聞くと、障壁の把握が一段深くなります。顧客が使った言葉はそのまま記録し、訴求の文案に転用してください。
Q. BtoBの場合はどう作りますか?
意思決定に関わる役割ごとに分けて考えます。使う人(現場担当)、選ぶ人(部門責任者)、承認する人(決裁者)では、判断軸がまったく異なります。現場は使いやすさ、責任者は業務効果、決裁者は投資対効果を見ます。ペルソナは主担当となる1役割で作り、ジャーニーの中で他役割が登場する箇所を明示する形が実務的です。
Q. 更新はどのくらいの頻度で行いますか?
半年に一度を基本とし、加えて変化が起きたときに随時見直します。競合の新規参入、失注理由の傾向変化、主要流入チャネルの変化、自社サービスの提供内容の変更が、随時更新のきっかけです。更新時には差分を記録し、全員がアクセスできる場所に保存してください。担当者のローカルにある資料は必ず使われなくなります。
Q. ライバルマーケティング広告はどんなときに検討すべきですか?
ジャーニーを描いた結果、比較段階の打ち手が不足していると判明した場合に検討します。この段階のユーザーは自社サイトを離れて競合を見ているため、通常の手段では届きません。失注理由に競合他社の名前が頻繁に出てくる場合は特に該当します。既存施策を置き換えるのではなく、ジャーニー上の空白を埋める手段として考えてください。
著者・監修
DSSマーケティング編集部
株式会社ディライトソリューションズ マーケティング編集部。BtoB・高単価サービスを中心に、顧客調査に基づく訴求設計と広告運用の支援を行っています。本記事は2026年7月時点の実務水準をもとに構成し、期間や人数の目安は事業規模により幅が出る前提で記載しています。
関連記事












