「カスタマージャーニーマップは作ったが、施策に反映されていない」——きれいな図が資料フォルダに眠っている状態は、かなりよく見ます。
結論からいうと、ジャーニーは「顧客の心情を描くこと」が目的ではなく、「どの段階に接点が無いかを見つけること」が目的です。抜けが見つからないジャーニーは、作る意味がありません。
この記事でわかること
- ペルソナとカスタマージャーニーの関係と順序
- 段階の切り方(心情ではなく行動で切る)
- 各段階で用意する接点とコンテンツ
- 抜けが見つかったときの打ち手
- 更新のタイミングと、形骸化させない方法
ペルソナ単体の作り方はマーケティングペルソナの作り方で扱っています。本記事はジャーニー側の実務です。
競合の顧客理解サービス閲覧者を指定し、自社の広告相談へ誘導。
【結論】使えるペルソナの4条件
| 条件 | 内容 | 欠けたときに起きること |
|---|---|---|
| 事実に基づく | 調査データが出典として存在する | 社内の思い込みが固定化される |
| 判断軸がある | 何を基準に選ぶかが書かれている | 訴求もLP構成も決められない |
| 接点とつながる | どのチャネルで会えるかが分かる | 施策に翻訳できず資料で終わる |
| 更新される | 見直しの周期が決まっている | 数年前の想定のまま運用される |

ペルソナが施策に使われるかどうかは、次の4条件を満たしているかで決まります。
最も重要なのは判断軸です。「価格と品質のどちらを優先するか」「導入までの期間と機能の多さのどちらを重視するか」といった選択の基準が書かれていれば、その瞬間から訴求の優先順位が決まります。
順序は「ペルソナ → ジャーニー」
ペルソナは「誰か」、ジャーニーは「その人がどう動くか」です。順序を逆にすると、誰の行動を追っているのか分からない図ができます。
心情ではなく行動で切る
「不安になる」「期待が高まる」といった心情で段階を切ると、施策に落とせません。「何をしたか」で切ると、そのまま計測できる形になります。
| 段階 | 判定できる行動 | 計測方法 |
|---|---|---|
| 課題に気づく | 課題キーワードで検索する | 検索流入、動画視聴 |
| 手段を知る | 解説記事を読む | 記事の閲覧・回遊 |
| 比較する | 料金・事例・比較を見る | 該当ページの閲覧 |
| 問い合わせる | フォーム送信・電話 | コンバージョン |
| 決める | 商談・稟議 | 商談化率・受注率 |
使われないペルソナの共通点

共通点1:想像で作っている
社内会議だけで「こういう人だろう」と決めたペルソナは、担当者個人の経験に引きずられます。出典のない属性は書かないでください。
共通点2:細かく作り込みすぎている
名前、顔写真、家族構成、愛読誌、休日の過ごし方まで書いたペルソナをよく見ますが、そのほとんどは施策に影響しません。趣味の情報が広告文を変えるケースは稀です。
共通点3:人数が多すぎる
5人も6人もペルソナを作ると、どれに向けて作ればいいか分からなくなり、結局どれも使われません。初期は1人に絞ってください。
共通点4:更新されていない
市場も競合も顧客も変わるため、数年前のペルソナは現実とずれます。更新の周期が決まっていないペルソナは、必ず陳腐化します。
データの集め方
| 方向 | 方法 | 分かること |
|---|---|---|
| 定量 | アクセス解析、CRM、購買データ | 属性の分布と傾向 |
| 定性 | 既存顧客5〜10名へのインタビュー | 選んだ理由、迷った点、使った言葉 |
| 営業 | 商談記録、失注理由の集計 | 断られる理由、競合の名前 |
| 検索 | 検索語句レポート、サジェスト | どんな言葉で探しているか |

ペルソナの材料は、4方向から集めます。この中で最も費用対効果が高いのは、既存顧客へのインタビューです。
インタビューでは「なぜ弊社を選んだか」だけでなく、「どこと比較したか」「何が決め手だったか」「逆に不安だった点は何か」を必ず聞いてください。失注案件の担当者にも聞ければ、障壁の把握が一段深くなります。
ペルソナの書き方
| 項目 | 書く内容 | 悪い例 | 良い例 |
|---|---|---|---|
| 状況 | 置かれている環境と制約 | 35歳・課長 | 年商20億の製造業で、情シス兼任の総務課長。使える予算は年間300万円 |
| 課題 | 具体的に困っていること | 業務効率化したい | 月次の在庫棚卸に3人×2日かかっている |
| 判断軸 | 何を基準に選ぶか | コスパ重視 | 初期費用より、現場が使いこなせるかを優先する |
| 障壁 | 断る理由になるもの | 特になし | 既存システムとの連携可否が不明だと稟議に出せない |

書く項目は4つに絞ります。
障壁まで書けて初めて、ペルソナは使える状態になります。断る理由が分かれば、LPで先回りして潰すべき論点が決まるためです。
カスタマージャーニーの描き方
| 段階 | 行動 | 感情 | 接点 |
|---|---|---|---|
| 認知 | 課題を自覚する、検索し始める | 不安・焦り | 検索、SNS、記事 |
| 情報収集 | 複数社のサイトを見る | 期待・混乱 | 自社サイト、比較記事 |
| 比較 | 候補を絞る、社内で相談する | 迷い・不安 | 事例、価格ページ、競合サイト |
| 決定 | 問い合わせ、稟議、契約 | 期待・緊張 | 商談、提案資料 |

ジャーニーは、段階ごとに「行動・感情・接点」を並べます。
描くうえでの要点は感情の変化を必ず入れることです。感情が落ち込む場所——「情報が多すぎて分からなくなる」「社内を説得できる材料がない」——が、打ち手を置くべき箇所になります。
接点はどこにあるかを数字で確認する
(ソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率・全年代)LINE:91.1%、Instagram:52.6%、X(旧Twitter):43.3%、Facebook:26.8%/(動画共有系)YouTube:80.8%、TikTok:33.2%
出典:総務省情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和7年6月27日公表)https://www.soumu.go.jp/main_content/001017160.pdf
全年代の利用率はLINEが91.1%、YouTubeが80.8%、Instagramが52.6%、Xが43.3%、TikTokが33.2%、Facebookが26.8%です。ジャーニーの「情報に触れる場所」を想像で埋めず、この差を前提にしてください。
ただし数字はあくまで全体の傾向です。最も確実なのは、受注顧客に「どうやって当社を見つけましたか」「他にどこを調べましたか」を聞くことで、これだけでジャーニーの2〜3段階が実データで埋まります。
施策への落とし込み

ジャーニーを描いただけでは何も変わりません。接点ごとに「施策・担当・指標」を割り当ててください。
第一に、各接点に対応する施策を置きます。第二に、優先順位を決めます。ファネルの通過率が最も落ちている段階から着手するのが定石です。第三に、担当者を決めます。第四に、その施策を何で測るかを決めます。
担当と指標が空欄の施策は実行されません。ここまで埋めて、ジャーニーマップは初めて実務のツールになります。
競合サイトの広告担当者を指定し、自社の広告相談へ誘導。
更新と運用

ペルソナとジャーニーは、作った瞬間から古くなります。半年に一度の見直しを運用として固定してください。
加えて、次のような変化が起きたときは周期を待たずに更新します。競合に新規参入があったとき、失注理由の傾向が変わったとき、主要な流入チャネルが変化したとき、商品やサービスの提供内容が変わったときです。
更新時には、何がどう変わったかを差分として記録してください。変更履歴が残っていると、「なぜこの想定になっているか」を後から追えます。また、保存場所は全員がアクセスできる場所にしてください。担当者のローカルにあるペルソナは、必ず使われなくなります。
効果測定の設計
| 段階 | 見る指標 | 落ちている場合の示唆 |
|---|---|---|
| 認知 | 表示回数、流入数 | そもそも届いていない |
| 情報収集 | 回遊率、滞在時間 | 知りたい情報が見つからない |
| 比較 | 事例・価格ページ到達率 | 比較材料が不足している |
| 決定 | CVR、商談化率 | 障壁を潰せていない |

ジャーニーを設計したら、段階ごとの通過率を測ります。通過率が最も落ちている段階が、次の打ち手の場所です。
あわせて、ペルソナの仮説が当たっていたかを検証してください。想定した判断軸が実際の受注理由と一致していたか、想定した障壁が実際の失注理由と一致していたかを突き合わせます。
比較段階への打ち手

ジャーニーを描くと、多くの企業で「比較」段階の打ち手が手薄になっていることが分かります。
認知段階にはコンテンツと広告があり、決定段階には商談と提案資料があります。しかしその中間——ユーザーが競合と自社を並べて検討している時間——に対して打てる手が、事例ページの追加くらいしかない、という状態が典型です。
この段階のユーザーは自社サイトを離れて競合のサイトを見ているため、自社の接点の外側におり、通常の手段では捕捉できません。
ライバルマーケティング広告は、競合を調べている段階のユーザーに自社を選択肢として提示する手法です。次の条件に複数当てはまるなら、検討する価値があります。
- ジャーニー上で比較段階の打ち手が不足している
- 競合と比較されやすい商材である
- 失注理由に競合他社の名前が頻繁に出てくる
- 比較材料(事例・価格・違い)は用意できている
抜けが見つかるのはたいてい「比較」
ジャーニーを埋めると、認知(記事・SNS)と獲得(検索広告・問い合わせフォーム)は接点があるのに、比較段階だけが空白というケースが非常に多くあります。
検索連動型広告は、インターネット広告媒体費に占める構成比38.7%(取引手法は運用型)。ディスプレイ広告は運用型が前年比111.5%、予約型が前年比98.8%。
出典:電通「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026年3月5日発表)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html
検索連動型広告はインターネット広告媒体費の38.7%を占める最大の枠ですが、対象は検索している人に限られます。競合のサイトで料金や事例を見比べている段階の人には、検索広告もリターゲティングも届きません。
比較段階に置くもの
- 自社サイトの比較材料(他社との違い・費用の目安・導入の流れ・断り方)
- 比較系キーワードの検索広告
- 競合を検討している層への配信
ライバルマーケティング広告では、指定した競合URLの訪問者を対象候補として配信を設計します。ジャーニーで特定した「比較の抜け」を、そのまま埋める手段になります。配信可否・対象母数は対象URLと商圏によって変わるため、事前診断で確認します。
まとめ
ペルソナとカスタマージャーニーは、作ること自体が目的になると必ず形骸化します。判断に使える情報が入っているかどうかが、すべての分かれ目です。
既存顧客へのインタビューを軸に事実を集め、状況・課題・判断軸・障壁の4項目で1人だけ書きます。ジャーニーには感情の変化を入れ、落ち込む場所に打ち手を置きます。接点ごとに担当と指標を割り当て、半年ごとに見直します。検証では、想定した判断軸と障壁が実際の受注・失注理由と一致していたかを確認してください。
ペルソナとカスタマージャーニーに関するよくある質問

Q. ペルソナは何人作るべきですか?
初期は1人に絞ってください。複数作ると、どのペルソナに向けて施策を作るのか判断できなくなり、結果としてどれも使われません。1人のペルソナで施策を回し、成果が安定してから2人目を追加する進め方が確実です。既存顧客の中で最も受注しやすく、かつ利益率の高い層から選んでください。
Q. 作成にはどのくらい時間がかかりますか?
既存顧客5〜10名へのインタビューを含めて2週間程度が目安です。ただし完成度を上げようとして時間をかけすぎないでください。この種の資料は使いながら精度を上げるものです。粗くても2週間で作って施策を回し、実際の受注・失注データで補正していくほうが、3か月かけて完璧を目指すより早く成果に近づきます。
Q. インタビューでは何を聞けばよいですか?
「なぜ弊社を選んだか」に加えて、「どこと比較したか」「何が決め手だったか」「不安だった点は何か」を必ず聞いてください。特に比較先と不安点は、ペルソナの判断軸と障壁の欄に直結します。可能であれば失注した相手にも聞くと、障壁の把握が一段深くなります。顧客が使った言葉はそのまま記録し、訴求の文案に転用してください。
Q. BtoBの場合はどう作りますか?
意思決定に関わる役割ごとに分けて考えます。使う人(現場担当)、選ぶ人(部門責任者)、承認する人(決裁者)では、判断軸がまったく異なります。現場は使いやすさ、責任者は業務効果、決裁者は投資対効果を見ます。ペルソナは主担当となる1役割で作り、ジャーニーの中で他役割が登場する箇所を明示する形が実務的です。
Q. 更新はどのくらいの頻度で行いますか?
半年に一度を基本とし、加えて変化が起きたときに随時見直します。競合の新規参入、失注理由の傾向変化、主要流入チャネルの変化、自社サービスの提供内容の変更が、随時更新のきっかけです。更新時には差分を記録し、全員がアクセスできる場所に保存してください。担当者のローカルにある資料は必ず使われなくなります。
Q. ライバルマーケティング広告はどんなときに検討すべきですか?
ジャーニーを描いた結果、比較段階の打ち手が不足していると判明した場合に検討します。この段階のユーザーは自社サイトを離れて競合を見ているため、通常の手段では届きません。失注理由に競合他社の名前が頻繁に出てくる場合は特に該当します。既存施策を置き換えるのではなく、ジャーニー上の空白を埋める手段として考えてください。
ジャーニーマップを作っても施策に反映されません
目的が「描くこと」になっている可能性があります。ジャーニーの成果物は図ではなく「接点が無い段階のリスト」です。各段階に「自社の接点は何か」を書き、空欄が残った段階が着手すべき場所になります。
段階はいくつに分けるべきですか?
5段階程度で十分です。細かく分けるほど施策に落としにくくなります。また心情ではなく行動で切ってください。「何をしたか」で切れば、そのまま計測できる形になります。
ペルソナとジャーニーはどちらを先に作りますか?
ペルソナが先です。「誰か」が決まっていないと、誰の行動を追っているのか分からなくなります。ただしペルソナも完璧である必要はなく、受注顧客3社へのヒアリングで粗く作れば十分です。
情報は何をもとに埋めますか?
想像ではなく実データです。優先度は①受注顧客へのヒアリング、②失注理由の記録、③検索語句レポート、④サイトの回遊データ。とくに①は1社30分で、複数段階がまとめて埋まります。
どのくらいの頻度で更新しますか?
比較段階(誰と比べられているか)は四半期ごと、それ以外は商材や価格を変えたときです。比較相手は半年で入れ替わることがあり、ここが古いまま施策を続けると実態とずれます。
著者・監修
DSSマーケティング編集部
株式会社ディライトソリューションズ マーケティング編集部。BtoB・高単価サービスを中心に、顧客調査に基づく訴求設計と広告運用の支援を行っています。本記事は2026年7月時点の実務水準をもとに構成し、期間や人数の目安は事業規模により幅が出る前提で記載しています。
顧客理解の検討層を競合サイトで指定し、自社の広告相談へ誘導。
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