「同じ設定で回しているのに、年々CPAが上がっている」「自動化が進んで、運用者が何をすべきか分からなくなった」——コロナ禍以降のWeb広告で、多くの担当者が直面している変化です。
結論からいうと、変わったのは手法ではなく前提です。①広告費の総量が増えて枠の取り合いが激化し、②配信の最適化がAIに移り、③個人の行動追跡が縮小しました。この3つを踏まえないまま従来の運用を続けると、単価だけが上がり続けます。
この記事でわかること
- コロナ禍以降に変わった3つの前提(市場・AI・Cookie)
- 2026年に見直すべき予算配分の考え方
- 自動化が進んだ環境で運用者が握るべきもの
- Cookie規制で効かなくなった手法と、その代替
- 指標の置き方と、判断の順番

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【結論】変わったのは手法ではなく「3つの前提」

| 変化 | 現場で起きること | 対応の方向 |
|---|---|---|
| ①市場の拡大と競争激化 | 設定を変えていないのに単価が上がる | 母数の作り方が違うチャネルを持つ |
| ②配信最適化のAI移行 | 細かい調整の余地が減る | 計測とクリエイティブに労力を移す |
| ③Cookie規制 | リターゲティングの母数が痩せる | 自社データ・文脈・比較段階へ寄せる |
この3つはどれも「元に戻る」性質のものではありません。一時的な変動として様子を見るのではなく、配分と運用の前提そのものを組み替える必要があります。
変化①|広告市場は拡大し、枠の取り合いが激しくなった

2025年の日本の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)、インターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)、マスコミ四媒体広告費は2兆2,980億円(前年比98.4%)。
出典:電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月5日発表)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011003.html
総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)、インターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)で、構成比では初めて過半数に到達しました。一方でマスコミ四媒体は2兆2,980億円(前年比98.4%)と縮小しています。
これが現場で意味すること
広告費がデジタルへ流れ込み続けている=同じ枠を狙う出稿者が毎年増えているということです。自社が何も変えなくても入札は競り上がります。「昨年と同じ予算で同じ件数」は、放っておくと成立しません。
取れる対応は3つだけ
- 品質を上げて単価を下げる(広告文と遷移先の関連性、表示速度)
- 無駄な配信を削る(検索語句の除外、既存顧客の除外)
- 母数の作り方が違うチャネルを持つ(検索以外の接点)
1と2をやり切ってから3に進むのが順序です。3から始めると、受け皿が整っていないまま新しいチャネルを増やすことになり、同じ失敗を繰り返します。
変化②|配信の最適化がAIに移り、運用者の仕事が変わった

入札もターゲティングも配信面の選択も、主要媒体では自動化が進みました。P-MAXやAdvantage+のように、配信先を細かく指定できないキャンペーンが主流になっています。
運用型広告費は2兆9,352億円(前年比112.5%)で、インターネット広告媒体費に占める構成比は88.7%。予約型広告費は3,042億円(前年比109.1%)、成果報酬型広告費は699億円(前年比96.1%)。
出典:電通「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026年3月5日発表)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html
運用型広告費は2兆9,352億円(前年比112.5%)で、インターネット広告媒体費の88.7%を占めます。手動で管理しきれない規模と面の数になったからこそ、最適化が自動化側へ移りました。
運用者が握れるものは3つに絞られた
| 握れるもの | 具体的にやること |
|---|---|
| 目標(何を成果とするか) | 主要コンバージョンを売上に近い行動1つに絞る |
| シグナル(何を渡すか) | 計測の正確さ、除外条件、顧客リスト |
| クリエイティブと遷移先 | 素材の数と質、LPの判断材料 |
計測がずれたまま自動化に任せると、誤った方向へ最適化が進みます。入札の微調整に費やしていた時間を、計測の点検とクリエイティブの制作に振り向けるのが、この環境での正しい配分です。
変化③|Cookie規制で、追跡前提の手法が痩せた

サードパーティCookieの制限とブラウザのトラッキング防止により、リストに入る人数と保持できる期間の両方が縮んでいます。「設定は変えていないのに配信量が減った」の多くはこれが原因です。
影響の大きさは手法によって違う
- 大きい:リターゲティング、行動・購買意向ターゲティング
- 中程度:興味関心ターゲティング、位置情報
- 小さい:検索キーワード、デモグラフィック、プレイスメント(面指定)
代替は3方向
- 自社データの活用:顧客リスト、メール、LINEなどCookieに依存しない識別子で配信する
- 文脈で当てる:ユーザーの履歴ではなく、掲載面の内容で選ぶ
- 比較段階に直接当てる:競合サイトを見ている層への配信で、自社流入に依存しない母数を作る
とくに③は、リターゲティングと対象が正反対(自社に来ていない人)なので食い合わずに新規接点を増やせます。ライバルマーケティング広告では、指定した競合URLの訪問者を対象候補として配信を設計します。配信可否と対象母数は対象URLと商圏によって変わるため、事前診断で確認します。
2026年に見直すべき予算配分

3つの変化を踏まえると、配分の考え方は次のようになります。
| 役割 | 手段 | 見直しの観点 |
|---|---|---|
| 今の獲得を支える | 検索広告(指名・課題KW) | インプレッションシェアが高止まりなら増額しない |
| 取りこぼしを拾う | リターゲティング | 母数が痩せている前提で、自社データ配信へ寄せる |
| 比較段階を埋める | 比較ページ+競合サイト訪問者への配信 | 受け皿が整ってから着手する |
| 積み上げる | SEO・MEO・自社リスト | 単価上昇の影響を受けない資産として育てる |
「広告費を増やす」以外の選択肢を必ず1つ持つ
単価が上がる環境では、広告費の増額だけで成長を作ろうとすると利益が削られます。止めても残るチャネル(SEO・MEO・顧客リスト)を1本は育ててください。これがあるかどうかで、数年後の広告依存度が変わります。
広告担当者の多い競合ページを指定し、自社の広告相談へ誘導。
指標の置き方|CPAだけでは判断できなくなった
自動化とCookie規制により、単一のCPAでチャネルを比較する前提が崩れています。次の4層で見てください。
- 到達:ユニーク到達数、インプレッションシェア
- 関心:クリック率、遷移先の滞在時間・スクロール率
- 行動:問い合わせ数、CPA
- 波及:指名検索数の変化、チャネル別の商談化率・受注率
④が今後いちばん重要になる
個人の行動追跡が縮小した結果、「どの広告がCVに寄与したか」を完全に紐づけることは難しくなっています。そのぶん、指名検索数の推移や、社内データと突き合わせた商談化率といった間接的な指標の重みが増しました。
とくに指名検索数は、開始前の記録がないと後から比較できません。施策を始める前に、直近4週間の指名検索数を必ず控えてください。
この環境で失敗しやすいパターン
- 単価上昇を自社のミスと誤認して入札を上げ続ける:外部要因なので、上げても件数は戻らない
- 計測がずれたまま自動入札に任せる:誤った方向へ最適化が進み、修正に時間がかかる
- 配信量の減少を入札の問題と誤認する:Cookie規制で母数が痩せている場合、入札では戻らない
- 自動化を理由に運用を放置する:計測・除外・素材は人が握るべき領域
- 資産型チャネルを持たない:広告を止めた瞬間にゼロになる構造が続く
確認の順番を固定する
成果が落ちたときは、①計測 → ②配信量(母数) → ③除外条件 → ④素材 → ⑤入札の順で確認してください。多くの現場が⑤から手をつけており、それが遠回りの原因になっています。
90日で組み替える手順
0〜14日:計測の点検
- 主要コンバージョンを売上に近い行動1つに絞る
- 重複カウント・電話CVの取りこぼしを確認する
- 開始前の指名検索数とチャネル別商談化率を記録する
15〜45日:無駄の削減と品質改善
- 検索語句レポートから除外を追加する
- 既存顧客・CV済みユーザーを除外する
- 遷移先に判断材料(費用の目安・他社との違い・導入の流れ)を足す
46〜75日:シグナルと素材に投資する
- 顧客リストを媒体へ連携し、Cookieに依存しない配信を作る
- クリエイティブを訴求の切り口ごとに3本以上用意する
76〜90日:足りない段階を1つ足す
ここまでで受け皿と計測が整っています。そのうえで、認知が細いなら動画・SNS、比較が細いなら比較ページと競合サイト訪問者への配信を追加します。順序を逆にしないでください。
まとめ|前提が変わったのだから、配分と役割を変える
ポストコロナのWeb広告で押さえるべきことは、次の4点です。
- 単価上昇は外部要因。入札の追随ではなく、品質改善・無駄の削減・チャネル追加で対応する
- 運用者が握るのは目標・シグナル・素材の3つ。入札の微調整に時間を使わない
- 追跡前提の手法は痩せる。自社データ・文脈・比較段階へ寄せる
- 止めても残るチャネルを1本育てる。広告依存のままでは利益が削られ続ける
そして指標は、CPA単独ではなく指名検索数と商談化率まで含めて見てください。完全な紐づけができない環境では、間接的な指標を先に整えておくことが判断の質を決めます。
選び方の検討層を競合サイトで指定し、自社の広告相談へ誘導。
ポストコロナのWeb広告に関するよくある質問
設定を変えていないのにCPAが上がります。何が起きていますか?
多くは外部要因です。インターネット広告費は前年比110.8%と伸び続けており、同じ枠を狙う出稿者が増えれば入札は競り上がります。入札を上げて追随すると単価だけが上がるため、まず品質改善(広告文と遷移先の関連性)と除外の整理を行ってください。
自動化が進むと、運用者は不要になりますか?
なりません。役割が変わっただけです。目標設定(何を成果とするか)、シグナル(計測の正確さ・除外・顧客リスト)、クリエイティブと遷移先——この3つは人が握る領域で、ここの質がそのまま成果になります。
Cookie規制でリターゲティングは使えなくなりますか?
使えなくなるわけではありませんが、母数と保持期間が縮んでいます。配信量の減少を入札の問題と誤認しないでください。自社データを使った配信、掲載面の文脈で当てる配信、比較段階への直接接触の3方向へ寄せるのが現実的です。
予算配分はどう見直せばよいですか?
まずインプレッションシェアを確認してください。検索広告で9割近くまで来ていれば、増額しても単価が上がるだけです。その分をSEO・MEO・顧客リストといった止めても残るチャネルか、比較段階の接点に振り向けてください。
効果測定で今後いちばん重要な指標は何ですか?
指名検索数の変化と、チャネル別の商談化率です。追跡が難しくなった環境では、管理画面のCPAだけで全体を判断できません。指名検索数は開始前の記録がないと比較できないため、施策着手の前に必ず控えてください。
何から手をつけるべきですか?
コンバージョン計測の点検です。主要CVが売上に近い行動1つに絞られているか、重複カウントや電話CVの取りこぼしがないかを確認してください。計測がずれていると、自動入札が誤った方向へ最適化を進めます。











