「ファネルの図は知っているが、自社の数字を当てはめたことはない」——この状態では、図を知っていても打ち手は決まりません。
結論からいうと、ファネルは概念図として眺めるものではなく、自社の実数を入れて「どこが細いか」を特定するための道具です。数字を入れて初めて、次にやることが決まります。
この記事でわかること
- ファネルの段階の切り方(行動で切る)
- 自社の実数を入れる手順
- 歩留まりの読み方と、どこを直すかの判断
- どこを直すと何件増えるかの試算方法
- ファネルが機能しなくなるケース

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【結論】段階は「行動」で切る

認知・興味・比較・行動といった心情ベースの区切りは、計測できません。「何をしたか」で切ると、そのまま数字が入ります。
| 段階 | 判定できる行動 | データの出どころ |
|---|---|---|
| ①流入 | サイトに来た | サイト解析 |
| ②検討 | 料金・事例・比較ページを見た | ページ別の閲覧 |
| ③反応 | フォーム送信・電話 | コンバージョン |
| ④商談 | 商談として成立した | 社内データ |
| ⑤受注 | 契約した | 社内データ |
5段階で十分
細かく分けるほど、各段階の数字が小さくなり、判断できなくなります。まずこの5段階で埋めてください。
自社の実数を入れる

直近3か月の数字を、上から順に埋めます。1か月では変動が大きすぎるため、3か月分でならしてください。
埋め方の例
| 段階 | 件数(月平均) | 前段階からの歩留まり |
|---|---|---|
| ①流入 | 10,000 | — |
| ②検討 | 800 | 8% |
| ③反応 | 40 | 5% |
| ④商談 | 12 | 30% |
| ⑤受注 | 3 | 25% |
①流入の中身も分けておく
運用型広告費は2兆9,352億円(前年比112.5%)で、インターネット広告媒体費に占める構成比は88.7%。予約型広告費は3,042億円(前年比109.1%)、成果報酬型広告費は699億円(前年比96.1%)。
出典:電通「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026年3月5日発表)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html
運用型広告費は2兆9,352億円(前年比112.5%)で、インターネット広告媒体費の88.7%を占めます。広告経由の流入は単価が上がり続けるため、自然検索・紹介・直接流入と分けて数えておくと、後から配分を判断できます。
埋まらない段階があってもよい
④⑤が埋まらない会社は多くあります。その場合、最初の改善は「記録の仕組みを作ること」です。問い合わせ後に商談へ進んだかを記録するだけで、ファネルが完成します。
歩留まりの読み方

数字が入ったら、他社の平均と比べるのではなく、自社の中で明らかに落ちている段階を探します。
段階ごとに疑う場所
| 落ちている箇所 | 疑う場所 |
|---|---|
| ①→②が低い | 集めている相手がずれている(キーワード・配信対象) |
| ②→③が低い | 判断材料の不足、フォームの入力項目 |
| ③→④が低い | 一次対応の速度、集めた相手の質 |
| ④→⑤が低い | 比較で負けている(比較材料の不足) |
最も上流の詰まりから直す
複数落ちて見えても、上流から1つずつです。①→②を直すと、以降の絶対数も自動的に増えます。下流から直すと、上流の詰まりで効果が埋もれます。
どこを直すと何件増えるか試算する

優先順位は感覚ではなく、掛け算で決まります。前章の例(流入10,000/②8%/③5%/④30%/⑤25%=受注3件)で試算します。
| 改善案 | 変化 | 受注件数 |
|---|---|---|
| 現状 | — | 3.0件 |
| 流入を1.5倍にする(広告増額) | 10,000→15,000 | 4.5件 |
| ②→③を5%→7%(判断材料の追加) | 受け皿の改善 | 4.2件 |
| ③→④を30%→45%(一次対応の速度) | 運用の改善 | 4.5件 |
広告費をかけずに同じ効果が出ることがある
この例では、広告費を1.5倍にするのと、一次対応を速くするのが同じ結果です。前者は毎月費用が発生し、後者は運用ルールを変えるだけです。自社の数字を入れて、どこが最も安く効くかを先に計算してください。
ファネルが機能しなくなるケース

ファネルは万能ではありません。次の場合は、単純な漏斗として扱うと実態を捉えられません。
1. 検討が行き来する商材
高額商材やBtoBでは、比較段階と情報収集段階を何度も往復します。「一度下の段階に進んだら戻らない」という前提は成立しません。各段階の在庫数(今その段階に何人いるか)でも見てください。
2. 紹介・指名が中心
紹介経由は①②を飛ばして③に入ります。紹介比率が高い場合、ファネル全体の歩留まりを見ても改善点が見えません。流入経路別にファネルを分けてください。
3. 既存顧客からの再購入
継続・再購入は新規獲得のファネルとは別の構造です。混ぜて集計すると、どちらの改善も見えなくなります。新規と既存は必ず分けて数えてください。
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上流の限界は数字に出る

検索連動型広告は、インターネット広告媒体費に占める構成比38.7%(取引手法は運用型)。ディスプレイ広告は運用型が前年比111.5%、予約型が前年比98.8%。
出典:電通「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026年3月5日発表)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html
検索連動型広告はインターネット広告媒体費の38.7%を占める最大の枠ですが、対象は検索している人に限られます。ファネルの①流入を広告で増やそうとしても、検索している人の総数は増やせません。
限界のサイン
- インプレッションシェアが9割近い
- 予算を増やしても流入が比例して伸びない
- キーワードを広げると②→③の歩留まりが落ちる
この状態は「①流入の作り方を変えろ」というサインです。母数の作り方が違うチャネル——競合を検討している層への配信など——を検討する局面になります。ライバルマーケティング広告では、指定した競合URLの訪問者を対象候補として配信を設計します。配信可否・対象母数は対象URLと商圏によって変わるため、事前診断で確認します。
よくある失敗5つ

- 教科書の図だけ持っていて、自社の数字を入れていない:打ち手が決まらない
- 心情で段階を切る:計測できず、図が絵で終わる
- 他社の平均と比べる:業種と成果地点で数値は数倍変わる
- 下流から直す:上流の詰まりで効果が埋もれる
- 新規と既存を混ぜて集計する:どちらの改善も見えなくなる
1番が圧倒的に多い
ファネルの概念を知っている人は多いのに、自社の5段階の実数を即答できる人はほとんどいません。数字を入れる作業は半日で終わります。ここを飛ばして施策を議論しても、優先順位は決まりません。
ファネル作成チェックリスト

| 区分 | 確認項目 |
|---|---|
| 構造 | 行動で5段階に切っている |
| 数字 | 直近3か月の実数を入れた |
| 数字 | 商談・受注まで記録できている |
| 分離 | 新規と既存、流入経路別に分けている |
| 判断 | 最も上流の詰まりを1か所特定した |
| 試算 | どこを直すと何件増えるか計算した |
まとめ|図ではなく数字として使う

マーケティングファネルで押さえるべきことは4点です。
- 行動で5段階に切る。心情で切ると計測できない
- 直近3か月の実数を入れる。他社平均と比べない
- 最も上流の詰まりから1つずつ直す
- どこを直すと何件増えるか掛け算で試算する。広告費をかけずに同じ効果が出ることがある
そして④→⑤(商談→受注)が落ちているなら、それは比較で負けているというマーケティング側の課題です。営業力の問題として処理せず、比較材料と比較段階の接点を確認してください。
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マーケティングファネルに関するよくある質問
段階はいくつに分けるべきですか?
5段階(流入・検討・反応・商談・受注)で十分です。細かく分けるほど各段階の数字が小さくなり、判断できなくなります。また心情ではなく行動で切ってください。
歩留まりの目安はありますか?
業種と成果地点で数倍変わるため、他社の平均は目安になりません。自社の中で明らかに落ちている段階を探してください。比較対象は他社ではなく、自社の過去実績です。
商談・受注のデータがありません
その場合、最初の改善は「記録の仕組みを作ること」です。問い合わせ後に商談へ進んだかを記録するだけで、ファネルが完成します。ツールがなくても表計算ソフトで始められます。
どこから直せばよいですか?
最も上流の詰まりからです。上流を直すと、以降の絶対数も自動的に増えます。下流から直すと、上流の詰まりで効果が埋もれて判定できません。
広告費を増やすべきか判断できません
掛け算で試算してください。「流入を1.5倍にする」と「一次対応を速くして商談化率を上げる」が同じ受注件数になることは珍しくありません。前者は毎月費用が発生し、後者は運用ルールの変更だけです。
紹介経由が多い場合はどうしますか?
流入経路別にファネルを分けてください。紹介は①②を飛ばして③に入るため、全体で集計すると歩留まりが実態を表しません。新規と既存も必ず分けて数えてください。





