「シニア向けだから文字を大きくして、紙のチラシを配る」——この発想だけで設計すると、届く相手が限られます。
結論からいうと、シニア層はデジタルを使わない層ではありません。年代で括るのではなく「生活状況」と「意思決定に誰が関わるか」で捉えると、設計が変わります。とくに家族の関与は、この層で最も見落とされる要素です。
この記事でわかること
- 年代で括らない対象設計の考え方
- デジタル利用の実態(想像で決めない)
- 意思決定に家族が関わる構造への対応
- 表現・UIで配慮すべき点
- オフラインとの併用と、効果測定
広告サービスの競合ページ訪問者を狙い撃ちし、自社の広告相談へ誘導。
【結論】年代ではなく「生活状況」で分ける

60代前半で現役就業中の人と、80代で介護を受けている人を同じ「シニア」として設計すると、どちらにも届きません。年齢は入口であって、判断基準ではありません。
| 分ける軸 | 何が変わるか |
|---|---|
| 就業状況(現役/退職) | 可処分時間、情報に触れる時間帯 |
| 同居状況(単身/夫婦/子と同居) | 誰が意思決定に関わるか |
| 健康状態・移動のしやすさ | 来店できるか、オンラインが必要か |
| デジタルの利用度 | 接点をどこに置くか |
この4軸で具体化すると、「文字を大きくする」以外にやるべきことが見えてきます。
デジタル利用の実態を想像で決めない

(ソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率・全年代)LINE:91.1%、Instagram:52.6%、X(旧Twitter):43.3%、Facebook:26.8%/(動画共有系)YouTube:80.8%、TikTok:33.2%
出典:総務省情報通信政策研究所「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和7年6月27日公表)https://www.soumu.go.jp/main_content/001017160.pdf
全年代の利用率はLINEが91.1%と突出し、YouTubeが80.8%です。「シニアはデジタルを使わない」という前提は、実態と合いません。とくにLINEは家族との連絡手段として広く使われており、この層にも到達します。
使う機能は限定的なことが多い
ただし、利用の幅は狭い傾向があります。「LINEは使うがアプリのインストールはしない」「検索はするがフォーム入力は避ける」といった形です。使えないのではなく、慣れた操作から出たくないという行動です。
だから設計はこうなる
- 新しいアプリを入れさせない(既に使っている経路で完結させる)
- 入力を最小にする(電話という選択肢を必ず残す)
- 1画面で完結させる(複数ページをまたがせない)
意思決定に家族が関わる

この層で最も見落とされるのが、本人以外が判断に関わるという構造です。高額商材、住まい、健康、金融、終活といった分野では特に顕著です。
2人分の材料を用意する
| 相手 | 気にすること | 用意するもの |
|---|---|---|
| 本人 | 使いこなせるか、面倒でないか | 手順の簡潔な説明、電話窓口 |
| 子ども世代 | 損をしないか、信頼できる会社か | 費用の内訳、会社情報、解約条件 |
子ども世代向けの導線を別に作る
「親のために調べている人」は、まったく別の検索をします。「〇〇 親 相談」「〇〇 実家」といった語です。この検索意図に答えるページを用意すると、本人向けだけでは取れなかった層に届きます。
表現とUIで配慮すべき点

読みやすさ
- 本文16px以上、行間はゆったり
- 薄いグレーの文字を使わない(コントラストを確保する)
- 1文を短く、専門用語には言い換えを添える
- 重要な情報を画像内の文字だけに入れない
操作しやすさ
- ボタンは十分に大きく、間隔を空ける
- 入力項目は最小限。カタカナ・英数字の入力を避ける
- 電話番号は必ず載せ、受付時間も明記する
- 「戻る」で入力が消えない設計にする
不安への配慮
この層で反応を止める最大の要因は「しつこく営業されるのではないか」という警戒です。問い合わせボタンの直前に、その場で決めなくてよいこと、断り方、連絡の頻度を明記してください。
誇張しない
健康・金融・住まいの分野では規制も厳しく、効果や結果を保証する表現、不安を過度に煽る表現は避ける必要があります。実績と手順を淡々と示すほうが、この層では信頼につながります。
オフラインとの併用

デジタルだけ、紙だけ、という二択ではありません。役割を分けて組み合わせるのが実務的です。
| 手段 | 役割 |
|---|---|
| チラシ・郵送物 | 認知、手元に残す(電話番号を大きく) |
| 検索広告・自社サイト | 調べたときの受け皿。子ども世代も見る |
| LINE | 継続的な接点、再来店の案内 |
| 説明会・相談会 | 対面での信頼構築 |
紙から電話への導線を数える
チラシを配って終わりにせず、専用の電話番号を載せて反応を数えてください。これがないと、紙の効果は永久に推測のままです。
広告担当者を競合サイトで狙い撃ちし、自社の広告相談へ誘導。
効果測定で見るべき指標

- 電話問い合わせ数:この層では最も多い反応。必ず計測する
- 資料請求からの面談化率:家族の同意が取れているかが現れる
- 「親のために」経由の割合:問い合わせ時に本人か家族かを聞く
- 成約までの日数:家族と相談する期間を織り込む
フォーム偏重の計測をやめる
電話CVを計測していないと、実績が大きく過小評価されます。電話番号のタップをコンバージョンに設定し、受電時に「何を見たか」を聞いて記録してください。
成約までの期間を長めに見る
家族との相談が挟まるため、問い合わせから成約までの期間は他の層より長くなります。月次のCPAで判断すると、成約に至る前に施策を止めることになります。四半期で見てください。
獲得単価が上がる環境での考え方
運用型広告費は2兆9,352億円(前年比112.5%)で、インターネット広告媒体費に占める構成比は88.7%。予約型広告費は3,042億円(前年比109.1%)、成果報酬型広告費は699億円(前年比96.1%)。
出典:電通「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026年3月5日発表)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html
運用型広告費は2兆9,352億円(前年比112.5%)で、インターネット広告媒体費の88.7%を占めます。広告で1件の反応を得るコストは年々上がっています。
この層では紹介の価値が特に大きい
シニア層は、知人・家族・かかりつけからの紹介が意思決定に強く影響します。広告単価が上がるほど、既存顧客からの紹介を意図的に作る仕組みの価値が上がります。
- 満足度の高い顧客に、どういう人を紹介してほしいかを具体的に伝える
- 紹介しやすい形(渡せる資料、簡単な連絡先)を用意する
- 紹介経由の成約率を記録し、広告経由と比較する
よくある失敗5つ
- 年代だけで括る:60代前半と80代を同じ設計にして、どちらにも届かない
- デジタルを使わない前提で作る:LINEの利用率は高く、検索もされている
- 家族向けの導線がない:「親のために調べている人」を取りこぼす
- 電話CVを計測していない:この層で最も多い反応を数えていない
- 月次のCPAで判断する:家族との相談期間があるため、成約前に止めてしまう
3番の機会損失が最も大きい
高額商材や住まい・健康の分野では、本人より子ども世代が先に調べていることが珍しくありません。「〇〇 親 相談」といった検索に答えるページがないと、この入口をまるごと失います。
比較段階での接点
この層でも、複数社を比べてから決めるという行動は同じです。むしろ家族が関わるぶん、比較はより慎重に行われます。
検索連動型広告は、インターネット広告媒体費に占める構成比38.7%(取引手法は運用型)。ディスプレイ広告は運用型が前年比111.5%、予約型が前年比98.8%。
出典:電通「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026年3月5日発表)https://www.dentsu.co.jp/news/release/2026/0305-011004.html
検索連動型広告はインターネット広告媒体費の38.7%を占める最大の枠ですが、対象は検索している人に限られます。子ども世代が競合のサイトを見比べている段階では、まだ自社を検索していないことがあります。
用意すべき比較材料
- 費用の内訳(何にいくらかかるか)
- 解約・変更の条件
- 会社の実績と体制(誰が対応するか)
- 他社との違いを、家族が読んで判断できる形で
ライバルマーケティング広告では、指定した競合URLの訪問者を対象候補として配信を設計し、この比較材料を載せたページへ誘導します。配信可否・対象母数は対象URLと商圏によって変わるため、事前診断で確認します。
シニア販促を確認する層を競合サイトで指定し、自社の広告相談へ誘導。
シニアマーケティングに関するよくある質問
シニア層はデジタルを使わないのでは?
実態と異なります。LINEの利用率は全年代で91.1%と突出しており、家族との連絡手段として広く使われています。ただし新しいアプリのインストールや複雑な入力は避けられる傾向があるため、既に使っている経路で完結させる設計にしてください。
文字を大きくすれば十分ですか?
不十分です。読みやすさは前提条件であって、成果を左右するのは入力の少なさ、電話という選択肢の有無、家族向けの材料があるかです。とくに「しつこく営業されるのでは」という警戒を消すことが、反応率に直結します。
家族向けの導線とは何ですか?
「親のために調べている人」向けのページです。「〇〇 親 相談」「〇〇 実家」といった検索に答える内容で、費用の内訳・会社情報・解約条件など、家族が判断に使う材料を載せます。本人向けだけでは、この入口をまるごと失います。
紙とデジタルはどちらを使うべきですか?
役割で分けてください。チラシ・郵送物は認知と手元に残すこと、検索広告と自社サイトは調べたときの受け皿、LINEは継続的な接点です。紙を配る場合は専用の電話番号を載せ、反応を数えられるようにしてください。
効果測定で気をつけることは?
電話コンバージョンを必ず計測してください。この層では最も多い反応形式で、計測していないと実績が大きく過小評価されます。また家族との相談期間があるため、月次のCPAではなく四半期で判断してください。
表現で注意すべき点はありますか?
効果や結果を保証する表現、不安を過度に煽る表現は避けてください。健康・金融・住まいの分野は規制も厳しく、家族の目にも触れます。実績と手順を淡々と示すほうが、この層では信頼につながります。









